国土交通省が昨年2月に設置した「観光マネジメント高度化のための人材育成検討会」(座長=溝尾良隆立教大学観光学部教授)はこのほど、計8回の会合をふまえた報告書をまとめた。国際競争力を備えた観光産業従事者の育成や、魅力ある観光地づくりを担う人材の育成をテーマに検討。観光事業者や業界団体に対して研修の強化、技能評価制度の導入を求めたほか、教育機関には観光教育の充実などを提言した。
報告書では当面の具体的方策として、(1)観光関連学部・学科を設置する大学や大学院のさらなる充実(2)(大学などでの)観光関係者のニーズに即応した人材育成カリキュラムの構築(3)産学官連携によるインターンシップの推進(4)初等中等教育段階での観光教育の充実(5)(観光産業従事者などへの)研修充実(6)技能評価制度などの検討(7)観光地域プロデューサーの育成──の7点を提言した。
人材育成の現状と課題では、観光産業の従事者について宿泊業、旅行業、ガイドなど業種別に整理した。宿泊業ではホテル業界の「ホテルマネジメント養成プログラム」などを紹介する一方で、国際観光登録ホテルでは「外客接遇主任者の選任要件の語学レベルが現状にそぐわない」、旅館業では「ホテル業界と異なり、従事者の技能を評価するための制度がない」。旅館経営者についても「教育内容は体系立っておらず、経営幹部層の人材が不足しているとの指摘もある」と報告。
これらの解決に向けた観光関連の個別事業者・業界団体の役割として、従業員のサービス力や外国語能力の習得、向上を支援する態勢の必要性を指摘。人材の育成や定着にも「計画的なOJT、資格取得の支援、企業内研修の実施、外部研修への派遣などで優秀な従業員の確保を図るべき」とした。具体的方策の「研修の充実」の中では、(1)経営マネジメント教育の充実(2)ホスピタリティー向上のための研修の充実(3)資格保有者に対する定期的な研修の実施──などを提言した。
教育機関については、大学では観光関連の学部・学科の設置が相次いでいるが、「教育内容について発展途上にある分野が多い」「カリキュラムの構成も学科が所属する学部や教授陣の専門分野によってさまざま」と課題を挙げ、さらなる教育内容の充実を期待した。
また、宮崎、沖縄両県の小学校で観光に関する授業が実施されている事例などをふまえ、小中高校での観光教育の充実が「観光立国実現には重要」と指摘した。