帝国データバンクがこのほどまとめた2015年の旅館・ホテル経営業者の倒産動向によると、同年1年間(1〜12月)の倒産件数(負債1千万円以上の法的整理)は前年比8.9%増の86件と、東日本大震災が発生した2011年以来、4年ぶりに増加に転じた。倒産態様別に見ると、事実上の再生型とみられる「特別清算」や「民事再生」の割合が増加。同社では「インバウンド需要の高まりを背景に、財務が悪化した業者が再生型の法的整理を選択するケースが増加したことが倒産件数を押し上げた」と分析している。
態様別のトップは「破産」で、件数58件、倒産全体に占める割合は67・4%だった。ただ、前年から件数で5件減少、構成比で12.3ポイント低下するなど、このところ減少傾向にある。
以下は特別清算の20件、構成比23.3%。民事再生の8件、構成比9.3%。
旅館・ホテルを含む全ての業種の倒産を見ると、特別清算の構成比は3.3%にとどまる。旅館・ホテルにおける特別清算の割合は突出している。
調査では「過去の景気低迷による業績の悪化、設備資金などの借入負担により経営が悪化している企業が新会社を設立して事業を譲渡、解散後に特別清算するケースが目立った」「ファンドなど外部資本を入れて新会社を設立する動きもあり、実質的な“再生型”の特別清算といえる」と分析している。
業歴別では、「30年以上」が48件、構成比55.8%と最多。以下、「20〜30年未満」(19件、22.1%)、「5〜10年未満」(6件、7.0%)の順。「倒産した主な旅館・ホテル経営業者の倒産要因を見ると、設備の老朽化や改修に伴う借入負担などの理由が目立っており、業歴の長い業者は設備の老朽化などから競争力が低下しているものとみられる」(同社)。
地域別では、北海道、関東、北陸、中部で件数が増加。近畿、中国、四国、九州は減少した。関西以西の倒産が減少傾向にあることについて、「(外国との)航空路線の拡充やクルーズ船寄港の増加などもあり、インバウンド増加の恩恵を受けているとみられる」(同)としている。
都道府県別では北海道(5件増の9件)と東京(7件増の8件)で増加が目立つが、「観光地としては人気だが、外資や異業種からの進出などにより競合が激化している可能性もある」(同)としている。
負債総額は499億8800万円で、同28.5%増と大幅に増加。ただ、2006年比では3分の1以下の水準にとどまっている。
旅館・ホテル経営業者の休廃業・解散件数は前年比14.9%増の131件と、3年ぶりに増加した。リーマン・ショックがあった2008年に234件発生。その後は減少傾向にあったが、同年は倒産件数とともに増加に転じた。