全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連)は6日、愛媛県松山市の愛媛県県民文化会館で第85回全国大会を開いた。前日の通常総会で正式に就任した佐藤信幸新会長(山形県、日本の宿古窯)は、あいさつの中で、(1)組合員数の激減への対応(2)組織力の強化と活性化(3)ビジネスモデルの発信──の3つの課題に対応すると自身の考えを述べ、「活気ある全旅連をつくりたい」と抱負を語った。
佐藤新会長は、「小原(健史)前会長の志を受け、これまでの活動を継続したい」とした上で、「新たな課題もあり、その対応も必要」と、3つの課題に取り組む方針を示した。
組合員数の減少には、3万軒から2万軒に減少した実態把握ほか、メリットのある、役に立つ全旅連として「必要な時に必要な情報を取り出せる」インターネットのコミュニティサイト構築に力を入れる。
組織力の強化には、都道府県理事長の意見をブロック会を通じて正副会長会議に積極的に取り入れ、全旅連の運営に反映させる。
ビジネスモデルの発信は、団体から個人に国民の旅行形態がシフトしている状況を受け、時代のニーズに即したビジネスモデルとは何かを研修会を通して研究。組合員に情報発信する。
佐藤新会長は「全旅連の組合員は、少なくなったとはいえ2万軒あり、そのポテンシャルは観光業界を左右する。業界の先輩方の意見に耳を傾け、成功している経営者の英知をお借りし、若い力のノウハウを借りて、活気ある全旅連をつくってまいりたい」と所信を述べた。
大会には全国から約1千人の組合員が参加した。地元愛媛県から、加戸守行・愛媛県知事、関谷勝嗣・観光産業振興議員連盟会長(参議院議員)、大木正治・愛媛県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長(大会実行委員長)が歓迎のあいさつを述べたほか、安倍晋三首相からの祝電、全旅連の「お宿親善大使」を務める卓球の福原愛選手からのビデオレターが披露された。
表彰では、厚生労働省健康局長表彰、全国生活衛生同業組合中央会理事長感謝状、全旅連会長表彰に続き、「第10回人に優しい地域の宿づくり賞」の表彰式が行われた。厚生労働大臣賞はナチュラルファームシティ農園ホテル(埼玉県)、全旅連会長賞は千葉県旅館ホテル生活衛生同業組合が受賞。観光経済新聞社社長賞は皆生温泉おかみ会が受賞し、江口恒明本社社長から賞状を受け取った(受賞者は本紙5月31日付既報)。
大会宣言と決議文(別項)の採択に続き、次年度の第86回全国大会の開催地、山形県の一行が登壇。「山形県に来てけらっしゃい」と多くの来訪を呼び掛けた。
元気な観光地の事例を発表 大会第2部
大会第2部として、「全国街づくり発表会」が行われた。元気な観光地づくりに実績をあげている4温泉地の事例を、全旅連青年部が中心となり発表した。
男鹿温泉(秋田県)は地元青年部員がなまはげに扮して神楽や太鼓を上演。行政を巻き込み地域挙げた活性化に取り組んでいる。
戸倉上山田温泉(長野県)は地元の歴史と文化を掘り起こし、「1宿1ギャラリー」「芸妓観光ガイド」など5つの事業を展開している。
別府温泉(大分県)と湯の川温泉(北海道)は地元の観光資源を生かしイベント化した「オンパク」事業を展開。活性化に実績をあげている。
講演した岡本伸之・帝京大学教授は「観光振興の基本原理は知らせて、見せて、また来たいと思わせること」「町の魅力の半分は空間快適性。町を歩いた時の居心地のよさだ」などと説いた。
佐藤新会長