帝国データバンクはこのほど、全国企業対象の景気動向調査の5月分を公表した。同月の景気DI(0〜100、50が判断の分かれ目)は前月比0.6ポイント減の41.8と、2カ月連続で悪化した。「個人消費停滞の影響が広がる中、熊本地震による生産や観光関連への影響が加わり、国内景気は悪化した」と同社。業種別では、旅館・ホテルが同6.1ポイント減の44.4と、東日本大震災時(2011年3月、12.8ポイント減)以来の大幅減。判断の分かれ目の50を14カ月ぶりに割り込んだ。
10の業界別では7業界が悪化、2業界が改善、1業界が横ばいだった。
このうちサービスは同0.7ポイント減の46.8。旅館・ホテルを含めて15業種中13業種が悪化した。娯楽サービス(同1.2ポイント減の36.8)はゴルフ場やフィットネスクラブなどスポーツ施設提供業や遊技場などの景況感が悪化。飲食店(同0.8ポイント減の42.3)も微減ながら低水準で推移している。改善はリース.賃貸(同0.8ポイント増の46.7)と専門サービス(同0.3ポイント増の48.6)のみ。
小売は同2.2ポイント減の38.0と3カ月ぶりに悪化し、30台に落ち込んだ。「家計所得が伸び悩む中、消費者の節約志向、選別志向の高まりで価格競争も厳しさを増しており、個人消費関連の悪化が目立った」という。
改善は不動産(同0.2ポイント増の48.3)とその他(同0.1ポイント増の37.5)。横ばいは運輸・倉庫(同0.0の41.5)。
10の地域別では7地域が悪化、3地域が改善した。
このうち九州は同1.7ポイント減の41.7と2カ月連続で悪化。都道府県別では熊本が同6.8ポイント減と、域内8県の中で際立って悪化し、47都道府県で悪化幅が最大だった。
中国は同1.6ポイント減の41.5と2カ月連続で悪化。大手自動車メーカーの燃費データ不正問題の影響を受け、岡山が同4.8ポイント減と、熊本に次ぐ下げ幅となった。
改善は北海道(同0.4ポイント増の39.6)、北関東(同0.4ポイント増の41.2)、北陸(同0.1ポイント増の39.3)の各地域。
景況感に関する企業の主な声は次の通り。
「熊本・大分地震により観光地への集客力が低下し、水産物、特に宿泊施設で利用される関あじや養殖ヒラメの需要が落ち込んでいる」(現在、悪い、漁業協同組合)。
「九州方面への旅行が減少している」(現在、悪い、一般旅行)。
「軽井沢バス事故以来、各バスの利用が減少気味」(現在、悪い、一般乗合旅客自動車運送)。
「熊本地震による二次被害が大きく影響している」(現在、悪い、旅館)。
「観光客が安定して流入しており、ホテル代なども高止まりしている」(先行き、良い、化粧品卸売)。
「インバウンドの観光客の好調と大型公共工事の継続、マイナス金利による民間工事の活況が予想される」(先行き、良い、自動車新車小売)。
「1年後は北海道新幹線開業効果が減少する」(先行き、どちらでもない、菓子・パン類卸売)。
「熊本大地震の風評被害の影響が心配」(先行き、どちらでもない、沿海旅客海運)。