コンサルタントのリョケンは11、12の両日、山形県蔵王温泉の蔵王四季のホテルで今年1回目、通算136回目の旅館大学セミナーを開いた。会場となった蔵王四季のホテルほか、蔵王温泉で3軒の旅館を経営する蔵王カンパニーの伊藤八右衛門社長が、自社の経営戦略を講演。「景気の悪い時に設備投資をする」「予想売り上げ以上の借金をしない」など、自らの経営哲学を披露した。
蔵王カンパニーは、源泉かけ流しの「源泉風呂」を持つ湯治場的旅館のおおみや旅館、総木造りの雰囲気ある内湯と露天岩風呂の「八右衛門の湯」を持つ蔵王国際ホテル、昨年離れの浴場「離れ湯百八歩」が完成した蔵王四季のホテルの3軒を経営する。それぞれ異なったコンセプトで運営し、グループ全体で幅広い客層を受け入れている。
講演で伊藤社長は、減少しつづけるスキー客への依存から脱却するために、温泉施設に力を入れたと説明。源泉を活用した「八右衛門の湯」「離れ湯百八歩」をリニューアル、新設し、通年客の誘致へ商品力を高めた。
伊藤社長は「金利が安く、建築費も安い、不景気の時にこそ設備投資をする。売り上げの2倍、3倍の投資をする人がいるが、景気が悪化した時に必ずやられる。自分は予想売り上げと同じ程度の借金にとどめている。売り上げ100に対し、借入が80ならば、不測の事態があっても20の金を動かせる。余裕を持った経営ができる」と、自らの経営哲学を述べた。
またコンサルタントを任せたリョケンについて、「多くの経営トップの欠点は、自分の間違いを指摘するスタッフがいないこと。経営者の考えと現実にだんだんズレが生じてくる。これが怖い。こんな事態に陥って、会社を倒産させた例をいくつか知っている。こうならないように外部のアドバイザーが必要だ」と述べ、コンサルタントの専門スタッフの必要性を強調した。
セミナーではこのほか、3軒の若手経営者(長野県菱野温泉常盤館・花岡薫専務、石川県山代温泉ゆのくに天祥・新滝英樹専務、大阪府伏尾温泉不死王閣・岡本厚社長)がそれぞれの経営戦略を講演した。
講演する蔵王カンパニーの伊藤社長