政府の観光立国推進戦略会議は9月24日、2020年に外国人旅行者を2千万人にする中長期戦略の策定に向けて、「観光実務に関するワーキンググループ(WG)」(座長=須田寛・東海旅客鉄道相談役)の第2回会合を開いた。テーマは海外プロモーション。日本観光を売り込むブランド戦略では、質の高い観光を求める旅行者層をメーンターゲットに、「プレミアム・デスティネーション」といったキーワードを打ち出す構想が示された。
ブランド戦略について、政府側からは国土交通省の本保芳明・総合観光政策審議官が「質の高い観光を求めて海外に出かける層をメーンターゲットとし、訪日旅行者のすそ野を広げていくべきではないか」と提起。日本が有する生活水準の高さ、治安や交通機関の高い安全性、文化芸術の発展といった強み、物価や地理的位置などの旅行者誘致の競争条件を踏まえたターゲット設定だ。
さらに、質を求める旅行者に対応したブランド戦略のキーワードとして、品質、付加価値の高い観光を提供する日本をイメージし、プレミアム・デスティネーションという言葉を示した。
こうした提案についてWGメンバーからは、大分・由布院の桑野和泉・玉の湯社長が「質の高さを求める層をメーンターゲットに据えることは、地方を疲弊させない観光を目指す上で重要だ。地域が元気になるように、地方の魅力を戦略的に発信してほしい」と要望した。
一方、星野リゾートの星野佳路社長は「プレミアムのキーワードには賛成だが、地方の宿泊施設は全然プレミアムではない。これをプレミアムにするには、設備投資が必要。国の政策によって休暇のあり方などを改善し、国内旅行の需要喚起によって設備投資を促すべき」と提言した。同時に、地方を外国人にPRするには、国内航空網の利便性向上が必要だと訴えた。
海外プロモーションに関しては、ブランド戦略以外にもメンバーの間から、日本の旅行会社にインバウンドビジネスを確立する必要性、査証(ビザ)の発給要件の緩和、東アジア各国との連携強化などを求める意見が出た。2010年の上海万博を活用したプロモーションの必要性を指摘する具体案も挙がった。
また、事務局からは今後の海外プロモーションの検討課題として、統一的な日本ブランドの発信に向けた省庁間や地方自治体との連携強化、キャッチフレーズ「YOKOSO! JAPAN」の再検討、外国人旅行者の誘致拡大に向けた大規模なキックオフイベントの開催などが示された。
質の高い観光を求める旅行者層をメーンターゲットに(WGの会合)