リクルート旅行カンパニー(冨塚優カンパニー長)は宿泊予約サイト「じゃらんnet」のシステム利用料(手数料)を来年4月1日に値上げする。現在、利用客がシングル利用(1人1室利用など予約人数と客室数が同数のケース)の場合に宿側から受け取る手数料は宿泊プラン料金の4%だが、これを6%に引き上げる。2人以上1室利用の場合の手数料8%は据え置く。
同時に新ポイント制度「じゃらん×ホットペッパーポイント」を導入。利用客に利用額の2%のポイントを付与する。ポイント相当額は手数料に加算していったん宿側に請求。利用客がポイントを使って宿泊した場合、使用金額を後日宿側に振り込み、清算する。
「じゃらん×ホットペッパーポイント」分の2%を新たに手数料に加算するため、宿側がリクルートに支払う金額は、シングル利用の場合には4%から8%に、2人以上1室利用の場合には8%から10%にそれぞれ上がる。実質的に8%と10%の2本立てとなる。
9月13日から10月25日にかけて、約300人のじゃらん営業担当者が全国約2万軒の契約宿泊施設に対して訪問または電話で、「システム利用料改定」と「じゃらん×ホットペッパーポイント」について口頭で説明。公式文書はじゃらんnetの管理画面上で10月25日に発表、閲覧できるようにする。来年3月31日までに同管理画面上で同意手続きを行うことを宿側に求める。
じゃらんnetのシステム利用料等の改定決定を受けて、国際観光旅館連盟の佐藤義正会長は「手数料率の問題は、旅館経営が厳しい中で引き下げてほしいというのが業界の切なる願いだ。今回のケースだけでなく、ネット、リアルを問わず他のエージェントが追随するのではないかという不安もある。業界全体として危機感を持ち、情報収集などに努めたい」とコメントした。
関係筋によると、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会では、10月25日に予定されている公式文書の発表以降、内容を検討し、組合員の反応を踏まえ態度を決める。
手数料値上げに関して、冨塚カンパニー長は1日、観光経済新聞の取材に応じた。
──なぜ手数料を上げるのか。
「じゃらん側の収入を増やすことが目的ではない。ポイントは基本的に利用客に還元する。利用客が使ったポイント分の金額は宿にお返しする。そのためポイント分はリクルート旅行カンパニーの収入になるわけではない。シングル利用の2%引き上げ分については、集客のマーケティングの原資として使い、結果的にすべて宿泊施設に還元するつもりだ」
──ポイント制度改定の理由は。
「実は旧じゃらんポイントは宿泊施設間で不公平な部分があり、利用客にとって使いづらい部分があった」
「旧ポイント制度では、利用客に5%のポイントを付与していたが、これを宿泊施設にそのまま請求することはせず、利用客がポイント分の権利を行使した時点で、その宿にご負担いただいていた。宿側には『無料宿泊券の提供』か『利用者がポイントを使った場合の実費負担』かのいずれかの方式で負担をお願いしていた。ただ計算上、無料宿泊券提供の場合、宿側の負担は宿泊プラン金額の1%となり、一方で利用ポイント分実費負担の場合、宿側の負担は宿泊プラン金額の10%となる。宿によって負担率が大きく異なる不公平な仕組みになっていた」
「利用客は宿泊プラン金額の最大10%までしかポイントを使えなかったが、新ポイントプログラムでは上限を3万ポイント(3万円に相当)に引き上げる」
──「じゃらん×ホットペッパーポイント」とは何か。
「利用客が、じゃらんnet、美容総合情報サイト『ホットペッパー・ビューティー』、飲食情報サイト『フームー・バイ・ホットペッパー』で貯めたポイントを、宿泊、ヘアサロン、飲食店などで使える共通ポイント。ターゲットが拡大し、宿泊施設の集客強化につながると信じている」
──楽天トラベルは利用者に対して楽天市場でも使える共通ポイント「楽天スーパーポイント」を1%付与し、業績を着実に伸ばしているが、これは対抗策なのか。
「そういった側面があることも否定しない」
──利用客側からするとポイント付与率が3%下がることになる。じゃらんnetからの客離れにつながる心配はないか。
「ポイントの利便性が飛躍的に高まることを強調して、宿泊施設への送客に尽力したい」