【道標 経営のヒント 183】唯我独尊のサイト、どう思います? 


 さまざまな旅館・ホテルのウェブサイトを日々閲覧している。今はどれもこれも、すごく格好良いサイトである。行けばそこに素晴らしい旅空間が待っているような気持ちになる。誰と行こうか、何をしようか…、そこまで思い浮かべてしまう宿もある。いけない、いけない。宿のサイトの見え方のマジックにその気にされてしまっている。だまされるものか。

 スマホからも宿泊予約が入ることが当たり前になった現在。ネットエージェントサイトはもちろん、自館のウェブサイトもマルチデバイス化対応を余儀なくされ、一見では分かりづらくなっている宿のサイト。どこもかしこも同じにしか見えない。そんなサイトを見て、旅行見込み客は何をポイントに宿を選んでいるのだろうか。そんなことを思ってしまう。

 安い高いだけで選ぶ方もいるだろうが、せっかく旅するのなら、自分の感性に合った宿を選びたいと思うのが普通の感覚だと思う。ネットエージェントサイトの「クチコミ」ページを見ると、宿泊料金の安さで選び、泊まったとき、そこにどれだけのプラスアルファがあったかどうかを基準に投書する人が多いような気もする。

 「コスパ」重視、のコメントが多い。宿側がどんなに素晴らしい施設を加えたとしても、見込み客側は、まず「安さ」を待ち続け、そのタイミングで予約してくる。せっかくの素晴らしい施設も、宿泊予約で埋まらないと価値がない。安価に設定して、少しでも元を取ろうと考える宿の考え方をユーザーは知っていて、待っていたように予約してくる。

 その上、泊まった感想をクチコミに投書してくるからたまらない。「申し訳ありませんでした。次回は必ず善処します」的なアンサーで逃れている宿も多いし、そのコメントを(悔しい気持ちを隠しながら)対処している担当者も大変だろうな、と察する。

 今思うのは、自館のサイトへの「思い入れ」である。決してネットエージェントサイトの言いなりになってはならないと思う。かといって、ネットエージェントサイトを否定しているのではない。情報をコントロールするのは宿に他ならないことを肝に銘じてほしい。売り上げさえ上がれば少々のことには目をつぶるという宿が多いようだが、主屋を乗っ取られないうちに善処することを願う。

 そのサイトを製作することを依頼されるが、今はすべて断っている。もう自信がない。製作することはおろか、日々刷新することも予想以上に難題がつきまとう。

 ちょっと昔のサイトは良かったね、そんな投書を懐かしく思う。唯我独尊のサイトを願うのは、時代のルールに反することなのだろうか。

 
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