前回に引き続き、マンネリになりがちな組織風土から脱却し、スタッフのやる気を高める企画アイデアを紹介しよう。旅館・ホテルは定型的な業務が多いため、どうしてもスタッフがマンネリ感を感じがちだ。職場の活性化を図る施策展開の参考にしてほしい。
6、スタッフの交換出向制度
親密な旅館・ホテル数軒でスタッフをお互いに出向させる。出向期間は3カ月~1年程度、職位は管理職~主任クラス、部門はフロントや接客、料飲サービスを想定するとよいだろう。
単独館の旅館・ホテルの場合、明確なキャリアパスを社内で作ることが難しい。入社から数年して一通りの仕事を覚えてしまうとマンネリ感を感じがちである。シフトの関係上休みが取りにくければ、他社がどのように取り組んでいるか知る機会も少ない。自分より優れたスタッフに会う機会も少ないので、井の中の蛙になりがちである。
交換出向制度はスタッフのスキル向上だけでなく、制度に参画した館のレベルアップにもつながる。ある館のスタッフが当たり前にやっている日常業務のやり方が、別の館のスタッフが見た時に非効率と気づくことがある。出向者も積極的に社内ミーティングに参加してもらい、課題や解決策について積極的に発言してもらうとよいだろう。
業務効率化や集客、口コミ向上などテーマを決めて、数カ月に1回、合同発表会を開催しても有益だ。社長や女将、次世代経営者は、同業他社と会合などで情報交換する機会はあるが、現場を運営するスタッフにはその機会が少ないのが実態だ。実務上の改善方法について、具体的な情報交換やディスカッションができれば、参加者の人材育成にもつながる。
他業界において、外部の企業や団体、取引先へ出向させるのは珍しいことではない。出世コースであることも多く、自社に戻って来たら要職に就き、活躍の機会が与えられる。本制度の推進に共感する旅館・ホテル数軒で取り組むことを期待したい。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)