前回に引き続き、旅館・ホテルの現場ですぐに実践できる問題解決スキルについて分かりやすく説明しよう。前例と勘に頼って安易に解決を図ろうとせず、業務効率や顧客満足度、売上利益を低下させている原因を見抜き、最適な解決策を考える能力を現場スタッフに身につけさせよう。
6、比べて考える
あるものと別のものを比べて考える思考法は、日常生活の中で誰しも使っているが、問題解決を行う際にも有効なスキルとなる。例えば、自館とライバル館や目標としている館との差はどこにあるのか発見し、自館の改善アイデアを考えるのに役立つ。
自館と他館を比べる際には、比較項目の頭出しからスタッフを中心に取り組みをさせるとよい。経営者の立場だと、他館の歴史の長さや業界での知名度、建物の立派さなど総合的なものに目が行きがちであり、現場の具体的な改善施策を考えにくい。顧客満足や作業効率、経費など現実的な取り組みにつながる項目を現場スタッフに考えさせてみよう。
比べる際には、大きさや長さ、重さ、金額、人数、点数、時間など定量的な尺度を使った方が簡単だ。雰囲気やイメージ、コンセプトなども大切な比較項目であるが、実際に比較するとなると経験や高い専門性が必要となるので難しければいったん検討外とした方がよい。
調べたものは、エクセルでマトリクス表を作成し、自動車の比較表のようにまとめると良いだろう。口コミ点数を比較する際には、単なる点数の比較にならないように留意しよう。なぜ、点数の差がついたのか原因となった項目を比較しないと解決策にはつながらない。例えば、清潔さや接客で差がついた場合に、単に差があるという事実だけでなく、差がついた原因はどこにあるのか具体的に調べて定量的に比べることが大切だ。
経費項目を比べる際には、業界団体や税理士団体が公表している業界平均のデータを使用するとよいだろう。他館の決算情報は大手旅館・ホテルを除いて手に入れることが難しいからだ。業界平均であれば、インターネットなどで容易に入手することが可能だ。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)