前回に引き続き、お金をかけずに日々の業務を効率化する方法を紹介しよう。観光業でもDXが注目されるようになったが、高額なシステム導入費用がネックとなり、取り組みに躊躇(ちゅうちょ)してしまう。予約業務は効率化したが、日々の業務は昔のままで全く効率化が進んでいない施設は少なくない。
(3)厨房・パントリーのレイアウト変更を行う
料理を提供するスタッフの流れと、食べ終わった食器を片付ける流れ(動線)が混線していないだろうか。厨房と食事会場をつなぐ出入り口が1カ所しかなかったり、通路に棚や荷物が多く通りにくかったり、お客さまの動きと交差したりする場合には動線に問題があるといえる。生産性を向上させるためにレイアウト変更を行おう。
給排水や電源、ガス配管の変更を伴う厨房機器の移設をしない限りは、レイアウト変更に追加費用はかからないが、スタッフが重量物を運ぶ必要がある。あらかじめ責任者が改善後のレイアウト図面を作成しておき、エリアごとに時間のある時に配置換えすると良い。
調理スタッフの協力が得られるならば、冷凍冷蔵庫やストッカー、食洗機、食器棚、デシャップ(料理渡し口)のレイアウト変更を検討したい。位置関係がバラバラであるためにスタッフの移動距離が長く、非効率となっている施設は非常に多い。
皆さまの施設にレイアウト上の問題があるかどうかは、動線分析を行えば簡単に把握できる。配置図を作成し、作業項目ごとにスタッフとモノの流れを線で結ぶのだ。
例えば、洗浄から盛り付けまでの動線に問題ないか分析するならば、ホールと食器洗浄機、食器棚、作業台を矢印(↓)で結び、移動距離を測る。ワゴンへの載せ替えや食器棚での並べ直し、運搬する際の段差など、作業時間増加につながる項目がある場合は注記を行う。
次に毎日の作業時間と作業回数を計測した上で、レイアウト改善後で予想される時間と比較する。もし現状と改善後の作業時間に大きな差があれば、現状のレイアウトに問題があるといえる。
現場に入らない経営陣にとって気づきにくいが、動線分析は生産性向上の定石である。ぜひ取り組んでほしい。
(アルファコンサルティング代表取締役)