前回に引き続き、不正・不祥事を仕組みでどのように抑止するか説明しよう。金銭横領は数百万円単位の損失となることも珍しくなく、会社の資金繰りに影響を及ぼす。経営者が評価し信頼を寄せている幹部スタッフが引き起こすケースが多く、すっかり人間不信になってしまう経営者もいる。このような事態に陥らないように日頃から仕組みで抑止しよう。
6、スタッフの借金トラブルに注意する
スタッフが自宅や自動車、教育資金などの支出のために金融機関から借り入れすることは何ら問題ないが、サラ金や同僚から借金しているという情報を得た場合には素行に注意を払いたい。個人の問題と見過ごしていると、後々重大なトラブルに会社が巻き込まれることもある。
借金トラブルを抱えているスタッフがいるかどうか見極めるためには、次のようなことに注意すると良い。
(1)会社宛てに「○○事務センター」といった見知らぬ差出人からスタッフ個人へ郵便物が届く(2)個人名でスタッフ宛てに度々電話がかかってくる(3)親族に多額の借り入れがあるという噂がある(4)浪費癖がある(5)同僚から借金をしているという噂がある(6)給与の割に身なりがみすぼらしい(7)SNSの投稿内容が身の丈にあっていない。
借り入れトラブルは日常業務にも悪影響を及ぼす。返済のことに気をもんでいると、社長や女将、上司の指示など上の空になっている可能性がある。同僚から借金をしている場合には、その同僚には頭が上がらなくなり社内の風通しが悪くなる。業者の甘言に乗せられやすくなり、仕入れ単価が上昇する原因にもなりうる。
借り入れトラブルを抱えているスタッフを見つけたら、積極的に問題解決の力になると良い。自制できないのであれば家族の協力も得て生活習慣を見直すよう努力をさせよう。親族の債務を肩代わりしていたり、連帯保証人として支払っている場合には、債務整理の専門家に相談するよう勧めても良い。
会社を巻き込む不正・不祥事が起きる前に対策することが大切だ。
(アルファコンサルティング代表取締役)