【逆境をチャンスに―旅館の再生プラン359】税制改正が旅ホに与える影響 青木康弘


 12月8日に政府与党から2017年度税制改正大綱が発表された。「税金のことは全て会計事務所に任せている」「難解で聞いても良く分からない」と感じる旅館・ホテルの経営者は多いと思う。しかしながら、配偶者控除の改正をはじめとして、旅館・ホテルの運営に影響を与えるものは多い。実際に変更されるのは再来年となるが、今のうちから備えておくことをおすすめする。本コラムでは、代表的なものを速報ベースで紹介しよう。

 ■配偶者控除・配偶者特別控除の見直し

 配偶者控除の対象となるパート比率の高い旅館・ホテルは、勤務シフトの大幅な見直しを迫られることになる。これまで103万円の壁を超えないように労働時間を調整していたパートが、より収入を得るために勤務時間をのばしたいと要望してくるようになるだろう。

 例えば、朝のブッフェの時間帯だけシフトに入っているパートがいるとしよう。103万円の壁ギリギリまで働こうとすると、時給千円、1日4時間(朝6~10時)、月21日働くことになる。これが、150万円まで働こうとすると、1日6時間に延長するか、1日8時間に延長して16日勤務に減らす必要が出てくる。朝食会場がクローズした後も働かせるならば、他の持ち場へ移動してもらう必要が出てくる。担当する業務量が変わらないのに、時間だけのばすと人件費が増える原因となるからだ。

 全社的なマルチシフト化を推進していく必要があるだろう。持ち場ごとに時給を決めている館はマルチシフトを想定した賃金体系へ見直す必要が出てくる。長く働いているパートは、新しい持ち場を担当することに心理的な抵抗を持つスタッフが少なくない。説得するための時間と労力や、新しい持ち場の仕事を覚えてもらうためのトレーニングが必要となる。

 正社員の3分の2以上の勤務時間、勤務日数となった場合には、社会保険の加入義務も出てくる。旅館・ホテルにとっては経費負担増となる。経費負担を減らしたいのであれば、パートにダブルワークを許容する必要があるが、周辺に働く場所の少ない温泉地の館にとっては対策を打ちにくい。人材の定着化を図っていくならば、思い切ってパートの正社員化も有効な手段である。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

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