【竹内美樹の口福のおすそわけ180】船で巡るウエスト・コースト その1 竹内美樹


 3度目の船旅に出掛けた。前回はカナダ・バンクーバーから出港し、アメリカ・サンフランシスコを目指したが、今回は同じ北米大陸西海岸でもサンフランシスコ以南。ロサンゼルスを発ち、カリフォルニア州内五つの港を巡り、メキシコ・エンセナダまで南下して、またロスに戻るというルートだ。

 最初の寄港地サンタバーバラは、初めて訪れる街。かつてスペイン領だったため、スパニッシュ・コロニアル様式の建物が多く、美しい街並みの人気のリゾート地である。観光客向けトローリーや電気シャトルバスが巡回する中心部から車で10分ほど走れば、海沿いのアローヨ・ブロー・ビーチ郡立公園だ。そこに1軒だけポツンと佇むレストラン「ボートハウス」へ。ぐるりとガラスで囲まれたテラス席で、目の前の海を眺めながらランチができるが、同店をわざわざ目指した理由は景色でなく、ストーンクラブだ。

 事前に公式サイトでメニューをチェックしたら、地元産のストーン・クラブ・クロウがあるではないか! クロウとは爪のことで、この蟹は大きな爪だけを食すため、捕獲すると片方のハサミ脚のみを取って海に逃がす。このハサミ脚は再生するので、再び資源になるというワケ。

 世界中の蟹を食べ歩いている筆者にとっては、垂涎モノの蟹だ。なぜなら、フロリダ・ストーン・クラブと呼ばれるこの蟹、本来その名の通りフロリダのマイアミ沖で獲れるモノで、しかも猟期が10月15日から5月15日までと決まっているので、その間しか食べられない。なのに、今すぐサンタバーバラで食せるなら、超ラッキーだ。

 氷が敷き詰められた巨大な皿に載って運ばれて来た爪は、15センチ近くあろうかというほど大きく、手に持つとズシリと重い。以前東京にも専門店があったが、随分前に閉店してしまったので、目にするのも食すのも久々だ。ストーンと言うだけあって石のように殻が硬いので、予めハンマーで叩き割ってある上身離れが良いから、意外と食べやすい。お味はと言うと、甘みが強くてコクがある。カクテルソースとサウザンアイランド・ドレッシングがついていたが、レモンを搾るだけで十分美味。

 メニューでもう一つ気になったのが、LOCAL UNIだ。ウニは英語で正確にはSea urchinと言うが、ウニでも通じるとはビックリ。

 登場したのは、アメリカムラサキウニとおぼしきもの。中央にトゲトゲの殻を配し、オレンジの輪切りの上に帆立貝の切り身を載せ、その上にウニが一切れずつ載ったものが周囲を取り囲んでいる。恐らく1個のウニの中身を取り出して、この一皿を作っているのだろう。日本のウニよりやや味が薄く水っぽかったが、日本に次いでウニの消費量が多いフランスや、新鮮なウニが手に入るニュージーランドでなく、アメリカでUNIをいただけただけで大満足。

 次回は大好きなサンフランシスコ。乞うご期待!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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