【竹内美樹の口福のおすそわけ161】豆でいてね!前編 竹内美樹


 新年号ということで、おせちに入っている縁起物の一つ、豆について。和風おせちの1段目には、本来「祝い肴三種」と呼ばれる縁起物を入れるのが決まり事。地域によって違うが、黒豆、数の子、田作りの三種とすることが多い。

 子孫繁栄を願う数の子、五穀豊穣を祈る田作りとともに三種に入る黒豆は、マメ(健康)でいられるようにとか、マメ(勤勉)に働けるようにとか、縁起担ぎであることはご承知の通り。

 縁起物とされる理由は他にも、黒が邪気を払ってくれる色とされていることや、七福神の大黒様にちなんだものとも言われる。例年12月9日前後に大黒様を祭る「大黒様の年取り」という行事が行われる地域があり、この日には黒豆料理を食べるそうだ。

 黒豆は、大豆の一種。一般的に大豆と呼ばれる黄大豆と、黒豆の黒大豆の他、緑色の青大豆もある。

 考えてみると、大豆ってエライ。暗い所で発芽させればモヤシになり、未成熟の豆は枝豆として食べられ、成熟した大豆は煮豆だけでなく、味噌や醤油、豆腐や納豆の原料にもなり、油も搾れる。お餅をおいしくいただける、きな粉になるのも忘れちゃいけない。しかも「畑の肉」と言われるほど、タンパク質が豊富。

 だから、小粒なのに「大いなる豆」ということで大豆と称されるようになったようだ。ちなみに英語ではsoybeanだが、大豆は17世紀に日本からヨーロッパに伝わったとされ、soyの語源は醤油と考えられている。

黒豆に話を戻そう。黒豆を煮る際、いかにシワが寄らないようにふっくらと仕上げるかに苦心するが、実はコレ、関西風なのだそうで、関東では「シワが寄るまで長生きできるように」と、わざとシワシワに煮る習慣があるのだという。知らなかった!

 煮るのが難しいのが小豆だ。小豆はシワが寄ると言うより、むしろ皮が破れやすい。中央から皮が割けた状態が切腹を連想させるため、武家社会の関東では祝い事に使うのを嫌い、慶事に食す赤飯には小豆でなく、皮が厚く破れにくいササゲを使うようになったそうだが、公家社会の関西では小豆のままである。

 小豆の中でも大粒で煮崩れしにくい「大納言」という品種がある。その名の由来は諸説あるが、皮が破れないため切腹とは無縁の公家の官位を名付けたという説が主流。武士の縁起担ぎは、魚の背開き・腹開きだけではなかったのだ。

 さて、このササゲ、漢字では「大角豆」と書く。クイズ番組の難読漢字問題に出て来そう! マメ科ササゲ属なのは小豆と同じだが、種が違う。サヤごと食用にもなり、外見はサヤインゲンとよく似ている。そう、豆には他にも、豆粒だけでなくサヤごと食べられる品種もあるのよね。

 豆好きの筆者、まだまだ書き足りないので続きは次号で。2017年、皆さまがマメでいられますようにと祈りつつ、自分自身はふっくら煮えた黒豆のように、少しでもシワ無く歳を重ねたいなぁと願う。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

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