東京都中央区月島は、言わずと知れたもんじゃ焼きの聖地。「西仲通り商店街」から半径500メートル以内に約70軒以上のもんじゃ焼き店があり、「月島もんじゃストリート」と呼ばれる。
数年前まで中央区民だった筆者。当時は住まいから徒歩圏内だったから、よく足を運んだ。名店とされる老舗から、もんじゃブームに乗って出店したニューウェーブ系までさまざまな店がしのぎを削る中、筆者のイチオシは「えびすや」。他も試してみたけど、やっぱりココに戻ってしまう。
そもそも、もんじゃ焼きって? 関東ではポピュラーだが、お好み焼きのように全国区ではないので、食べたことがないという方も多いだろう。そこで、まずはその作り方から。
小麦粉をダシなどの水分で溶き、具を混ぜる。鉄板で先に具だけ焼いてドーナツ状の土手を作り、そこへ生地を流し入れる。生地がグツグツ煮えてきたら、土手を崩して混ぜ合わせ、平たくして「はがし」と呼ばれるヘラでハフハフ食べる。ヤケドに注意!
お好み焼きと違い、水分が多く仕上がりはトロトロだが、よく焼けた部分はパリパリで、異なる食感が楽しめる。生地に味が付いており、ソースも要らない。
歴史は古く、文献から江戸時代後期には存在していたとされる。焼く時に生地で文字を書いて遊んだことから「文字焼き」と呼ばれたのがその名の由来で、具は入っていなかった。以来長らく駄菓子屋で子供のおやつとして親しまれてきたが、その後具材が入り、進化を遂げ大人の食べ物になっていったという。その過程で、粉を増やして硬めに焼き、持ち運べるようにした「どんどん焼き」が登場。これが関西地方に波及し、お好み焼きのルーツになったらしい。
話を戻そう。「えびすや」では、お店のお姉さんたちが手際よくもんじゃを焼いて下さる。オリジナルもんじゃ28種に、ビッグサイズの七福神もんじゃ7種、トッピングも豊富なので、組み合わせは無限大だ。
いつも、ツマミ系のえいひれバターからスタート。カリッカリに焼かれたヒレのウマイことと言ったら! そして七福神の一つ、めんたいこ、ベビースター、小柱、餅、チーズ入りの「布袋もんじゃ」。具材それぞれの味や、食感のハーモニーがたまらない。
他にも、もんじゃとお好み焼きの中間ぐらいのゆるさでチヂミっぽくもある「たらし焼き」や、甘党には「あんこ巻き」もおススメだ。
筆者が「お母さん」と慕っていた、笑顔がステキな女将(おかみ)さん、残念ながら昨年他界された。おせんべいのようになったもんじゃのおこげを、「ここが一番おいしいのよ」と器用に剥がしてくれた姿が懐かしい。
女将さんに会えないのは寂しいけど、娘さんはじめスタッフがアットホームな雰囲気を守り続けているから、今も女将さんの温もりが感じられる。人情味あふれる下町もんじゃには、味だけでないいろんな魅力が詰まっているのだ。あぁ、すぐ食べに行きたい!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。