そのレストランを初めて認識したのは、アメリカ・カリフォルニア州サンタモニカ。船旅の途中で寄港したため、食事はランチ一発勝負。ダウンタウンに行ってみたい店があり、バーベキュー・ビーフ・リブなどたらふく食した後、ビーチへ。海に突き出たような遊園地「パシフィック・パーク」を目指して歩いていると、近くにかわいいエビのイラストのロゴマークを掲げた店があったのだ。
その名は「ババ・ガンプ・シュリンプ」。文字通りエビを中心とした、アメリカン・シーフードレストランである。サンタモニカではおなかが一杯で諦めるしかなかったが、今度はハワイ・オアフ島ホノルルの、アラモアナ・ショッピングセンター内で同店を発見! その時も既に食事の後だったが、どうしても気になって寄ってみた。でも、結局看板料理のエビのビール蒸しを少々食すにとどまり、不完全燃焼であった。
そして先日、巨人阪神戦を観戦する機会を得た。東京ドームに隣接する商業施設に同店があるというので、今度こそエビを食べまくるぞ!と、試合前に意気込んで出掛けた。同店は、10カ国で約200もの飲食店を営むWDIグループのブランドの一つで、同社が手掛けるのは東京2店舗と大阪、バリ。本家は米国を中心に各国で展開、日本も含め40店舗にも上る。
その人気の秘密は、料理だけでなく雰囲気づくりにもある。アカデミー賞受賞映画「フォレスト・ガンプ」がテーマになっているのだ。主人公フォレスト・ガンプは友人ババの遺志を継ぎ、エビ漁を始めて大成功する。もし彼らがレストランを開いたらこうなるだろう、というのがコンセプト。だから、映画のシーンを再現したようなインテリアで、メニューにもジェニーやダン中尉など、登場人物の名前がある。
まずはハワイでも食べた「シュリンパーズ・ネット・キャッチ」。ブリキのバケツに入って運ばれたビール蒸しのエビを、スタッフが英字新聞を模した紙の上にザーッと広げてくれる。ガーリック風味かケイジャン風味を選べるが、迷わずガーリック。小さ目の殻付き無頭エビで、殻ごといただける。むいた方が食べやすいとも思うが、殻にガーリックソースがしっかり絡んでいるから、もったいない気がする。テーブルにペーパータオルがロールごと置いてあるので、ワシワシと手づかみでいただけば、ウマイの何の!
そしてフライド・シュリンプ。まろやかなタルタルソースとピリッと辛いカクテルソースが付いていて、いずれも美味。もう一つはシュリンプ・リングイネ。平たいパスタにレモンガーリックソースが絡み、トッピングのエビもプリップリ。ケッパーが良いアクセントになっていた。
一皿のボリュームが多く、2人ではコレで限界。余ったフライドポテトをテイクアウトしていざ球場へ。応援の甲斐あって巨人軍は勝利、サンタモニカ以来の念願も果たし、口福でゴキゲンな夜となった。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。