6ポンドのロブスター、トリュフ尽くしのコースなどラスベガスの口福をご紹介してきたが、締めくくりはやっぱりステーキ。朝カレーならぬモーニングステーキを食す人も多い、アメリカの国民食だ。
事前調査で見つけた、ラスベガス人気ナンバーワンとされるステーキ店を予約した。その名も「THE STEAK HOUSE」。行ってみると、重厚な雰囲気の玄関を入ってすぐに、ガラス張りの熟成庫があり、巨大な肉の塊がたくさん並んでいるではないか。同店では、ここで21日間エイジングした肉を提供しているという。期待が高まる。
ところが席に着いてすぐ、われわれ8名のテーブルは、大ブーイングの嵐に。今日はプライム・リブが売り切れたと言われたのだ。「ここはやめて他の店に行く?」と騒いでいると、再び戻って来たウエイターが、何とか四つだけ確保できたと言うので事なきを得た。ボリュームがあるから、四つあれば充分だ。
折角なので、他にリブ・アイとフィレ・ミニヨンもオーダー。ここでお肉のメニューを眺めながら、ふとギモンが湧いてきた。アレ?「ニューヨーク・ストリップ」って何だっけ?
アメリカのレストランのステーキメニューには、日本であまり見かけない名称が出て来る。おなじみのサーロインやフィレ以外の物を調べてみた。米国食肉輸出連合会のサイトに、アメリカン・ビーフの呼称と日本の呼称を対比させた表がある。それによると米国の「リブアイロール」は日本の「リブロース芯」、「ストリップロイン」は「サーロイン」とのこと。
もう少し探ってみると、ショートロインと呼ばれる腰の部分が加工によってさまざまな呼称になることが分かった。まずはT字型でおなじみのTボーンステーキ。これはショートロインを骨ごとカットしたもので、T字の片方がサーロイン、もう一方がフィレである。この骨を取り除いたサーロイン側をNYストリップと呼ぶのだそう。
似て非なるのがこのTボーンと「ポーターハウス」だ。T字型の骨が付いているのは同じだが、圧倒的に違うのがフィレの量。フィレ肉の幅が1・25インチ以上のものだけが「ポーターハウス」と呼ばれ、価格も跳ね上がるらしい。
他にも、「スカート」は日本のハラミなど色々あるが、われわれがこだわった「プライム・リブ」とは何か? これは肉の部位というより料理名で、上質な骨付きリブ肉を大きな塊のままローストし切り分けた、米国版ローストビーフ。別名、「スタンディング・リブ・ロースト」というのだとか。
さて、そのお味は…。赤身肉が好みでない筆者にとって、フィレはどうしたって黒毛和牛の勝ち。だが、骨付きリブアイは、まさに「肉を食らう」という充足感が。そしてプライム・リブはしっとり軟らかジューシーで、赤身でも超美味。
牛肉生産量世界一、肉の本場で食べるステーキは、「これぞアメリカ!」と言いたくなる口福であった。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
フィレミニヨン
骨付きリブアイ
プライムリブ