統一地方選挙が目前に迫ってきた。日本の各地域はさまざまに解決困難な課題を抱えており、統一地方選挙が重要であるが、現実には地方選挙の盛り上がりに欠けている。統一地方選挙では地方創生の総括が重要になる。政府は安倍晋三政権の下で2014年に地方創生政策を打ち出した。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力の向上を目指して、巨額の税金を投入して数多くの地方創生事業を実施してきたが、ほとんど成果が上がっていない。
北海道ではいま政府に頼らない地方創生の動きが生じている。北広島市で北海道日本ハム球団が15年から進めてきた「北海道ボールパークFビレッジ」が3月末に開業した。日本初の開閉式屋根の天然芝球場で、サウナや温泉、ホテル、多彩な飲食店街などと共に、グランピング施設、アウトドア用品が充実した商業施設、農業と食の魅力を学ぶことができる農業学習施設などが整備された魅力的なテーマパークだ。
総事業費約600億円が投入され、北広島市への経済波及効果は開業初年で211億円と試算されている。来場者による消費活動に加えて、関連産業の生産拡大が期待されている。税金に依存しないかたちで民間企業が「北海道のシンボル」としてのボールパークビレッジづくりを行っており、高く評価できる。
とはいえ、ボールパークビレッジが成功を収めるためには、やはり日ハム球団が野球で好成績を上げ、野球の楽しさをより多くの人々に実感してもらうことが必要不可欠である。ファイターズの頑張りに期待したい。
太平洋に面した日高地域の浦河町(人口約1万1千人)では「インド人と共に生きる」地域づくりへの模索が始まっている。浦河町は馬産地であり、サラブレッドの生産と育成で評価されている町だ。町内の軽種馬牧場では競走馬が調教されているが、日本人騎乗員の減少が問題になっている。町内で騎乗員養成が行われているが、専門性が高い肉体労働のために町内に残るのは一握りで競走馬の調教に支障が生じている。
日本人騎乗員減少の危機を救ったのはインド人であった。英国の植民地であったインドでは競馬が盛んで、競走馬の調教経験を持つ国民が多い。そのため浦河町のサラブレッド牧場ではインド人騎乗員の募集を行った。その結果、昨年末には284人のインド人が浦河町に居住することになった。基本的にはお金を稼ぐためのインド人単身男性の来道が多いが、家族連れも増えており、幼稚園や小学校に通学するインド人子弟の増加が予想されている。
とはいえ、ヒンディー語や英語を話せる町民が少ないためにインド人の本格的な受け入れは容易ではない。しかし、浦河高校の生徒が自主的にインド人の子どもとの交流イベントを実施したり、町内の主婦グループがインディアンキッチンを開いてインド人主婦との交流を行うなど、草の根の国際交流が花開きつつある。
日本の観光業界はともすれば、政府の財政支援に頼りがちであるが、地方創生の基本は「地域の民産官学による自律的協働」である。そういう意味で北広島と浦河の今後の内発的発展を応援していきたい。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)