コミュニティツーリズム・集落滞在は、地域のコミュニティが主体的・自律的に観光受け入れを行うことをいう。コミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT)と表現されることもある。
これまでのマスツーリズムにおいては、地域のコミュニティは外部の団体からのリクエストに対してやや従属的な立場であった。しかし、これからはコミュニティが主体となって、地域の歴史や文化・産業・暮らしを守りながら観光コンテンツとしてもアピールし、地域の持続性に担保していくことが望まれる。地域の資源や文化の保持、雇用・交流創出の双方が期待できるものとなっている。
海外では既に1990年代から南米やアジア・アフリカ等から展開され、国内でも90年代後半から徐々に取り組みが拡大している。コロナやサステナブルツーリズムの観点からこのテーマが再注目されてきている。
この展開において、一番大事な前提は「主体を明確にし、無理をしないこと」だ。とにかく無理をした瞬間に、こうした取り組みはすぐに破綻してしまう。その前提をもとに理想的なステップを整理してみたい。(1)目的・手法の明確化(2)適正な規模・体制の整理(3)小さくトライアルでPDCAを回しながら事業化―の3ステップが必要だと考える。
まず、「目的・手法の明確化」においては、地域の未来がどうありたいか、住民を主体としたコミュニティが一定の展望を洗い出し、地域・集落の何の持続のために、どんなことが必要かを明確にしていくことが重要だ。
例えば、祭りの持続のために担い手が必要、文化伝承のために資金が必要、年配者に元気で長生きしてもらうために外部との交流が必要、特産品をもっと売るために消費者との交流が必要、といった具体的な目的と手法をクリアにしていくとよい。
「適正な規模・体制」においては、ついつい気張ってしまうと、負担の偏りが大きくなり、長続きしない。また、持続のために必要な値付けの在り方も明確にし、採算ベースで見てもメリットが大きいモデルを構築していく必要がある。
「小さくトライアルPDCA」では、すぐにはうまくいかないという前提で、まずはつながりのある人で回しながら、徐々に軌道に乗せていくことが必要だ。一定のテーマに共感するターゲット層を想定しながら、少しずつくらいの感覚がベストである。何回か回していくうちにポイントをナレッジにしていけるとよい。
以上の流れで、まずは回していくことが必要だ。例えば、私がお手伝いしている竹富町白浜集落は、町内会組織から若手のチームがサバニ(沖縄で受け継がれる伝統漁船)を中心とした文化継承のために、一般社団法人を立ち上げて事業や予算管理を回せる仕組みを構築し始めている。
受け入れ組織の在り方を含めて、徐々に軌道に乗せていくことが大事である。着々と観光も回復してくる中で、もとに戻すのではなく、地域のよりよい未来につながる形態が定着していってくれることを期待したい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)