3月21日に全国的にまん延防止等重点措置が解除されたが、早くもテレビ番組などでは「再び感染拡大傾向」「第7波の兆し」と騒がれ始めている。一方、スウェーデンでは4月1日に新型コロナウイルスが「社会に脅威を与えるウイルス」という位置付けから外され、事実上のいわば「コロナ終息宣言」が出ており、「マスク姿の市民はほとんどいない」と報じられている。
日本ではコロナ感染拡大をめぐって悩ましい状況が続いているが、今年に入ってから各地で芸術祭が開催されている。
すでに「マツモト建築芸術祭(長野県松本市)」や「極寒芸術祭(北海道弟子屈町)」などが会期を終了しており、これから「瀬戸内国際芸術祭」「越後妻有 大地の芸術祭」「あいち2022(あいちトリエンナーレの後継芸術祭)」「Reborn―Art Festival2021―22(宮城県石巻市、女川町)」などが予定されている。
私は神戸市生まれなので、瀬戸内国際芸術祭(以下、瀬戸芸)を応援している。瀬戸芸は香川県から岡山県にまたがる瀬戸内エリアで、春・夏・秋の3シーズンにわたって開催される現代アートフェスティバルだ。2010年から3年ごとに開催されており、今回は5回目を迎える。
瀬戸内海の12の島と二つの港を舞台にして、国内外の芸術家がそれぞれの島の歴史・景観を生かしたアートプロジェクトを展開する。春会期は4月14日から5月18日まで、その後に夏会期と秋会期が続く。
瀬戸芸の総合プロデューサーは福武總一郎氏(福武財団理事長)、総合ディレクターは北川フラム氏が務めている。瀬戸芸は一貫して「海の復権」をテーマに掲げており、過度の近代化、都市への一極集中、経済偏重の社会に対して、地方にこそ個性と魅力あふれる文化が残っているという考えに基づいて、地方の個性と魅力をアートの力で再発掘し顕在化させることによって、地域を元気づけることが意図されている。
福武氏は「気候変動、環境汚染、貧富の格差などの社会課題が突きつけられる中で、メッセージ性の高い現代アートに向き合い、美しい自然の中に身を置くことによって、本当の豊かさ・本当の幸せ・本当に持続可能な社会とは何かなどを考える」ことの意義を強調しておられる。
北川氏は「アーティストが各地域の特色を発見し、作品づくりをする中で、地域との交流が生まれていき、島の人たち(特にお年寄り)の知恵が生きてくる。そのときにアートはアーティストだけでなく、地域の人たちのものになる」と語っている。
私は瀬戸芸の第1回目から繰り返し各地を訪れているが、「アート心」の乏しい私でも島を歩き回りながらアート作品を見つけると、ほのぼのとした感動が心の中に生じて幸せな気分になれる。瀬戸芸では「こえび隊」と呼ばれるボランティアサポーターが活躍している。定住人口や交流人口とは異なる関係人口(地域と関わりをもつ人々)で、日本中からさまざまな人々が瀬戸芸を支えるために参加している。とりあえず「海と島とアートの祭典」の大成功を祈っている。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)