日本政府は2020年の東京五輪・パラリンピックを前提にして「2020年インバウンド4千万人」の実現を目指している。ところが日韓関係の泥沼化に伴って、韓国からの来日客が減少している。
例えば、韓国と北海道を結ぶ航空便数は8月1日時点で週に116便であったが、10月1日時点では6割減の週47便に落ち込む見通しが予想されている。航空便数の大幅減少は日韓観光交流の大幅減少につながるので国家間の関係改善が不可欠だ。また特定の国や地域に過剰依存する観光交流を是正し、多角化を図ることも不可欠である。
さまざまな国や地域との観光交流の多角化を図るためには新たな航空路の開設が決め手になる。その際に空港の果たす役割は最も重要である。そういう意味で長年にわたって懸案であった北海道内7空港の一括民営化の運営事業者がようやく決定されたことは喜ばしい。
道内7空港(新千歳、函館、旭川、釧路、帯広、女満別、稚内)の一括民営化は昨年8月に1次審査が行われ、最終審査では、フランス・パリ空港公団等の企業連合と地元の北海道空港(HKK)等の企業連合の一騎打ちになり、最終的に後者が運営事業者として選ばれた。
選定された企業連合(北海道エアポートグループ)は、HKK、三菱地所、東急電鉄、日本政策投資銀行、北洋銀行、北海道銀行、北海道電力、サンケイビル、JAL、ANA、三井不動産、三菱商事等で構成され、特定目的会社(SPC)を設立して7空港の運営を行う予定だ。
北海道エアポートグループはすでにさまざまな構想を公表している。例えば、今後30年間に4290億円の投資(新千歳2950億円、6空港1340億円)を行い、路線数(65から142へ)の増加、旅客数(2846万人から4584万人へ)の増加を目指している。さらに「世界の観光客を魅了し、北海道全域へ送客するマルチ・ツーリズムゲートウェイ」構想を公表している。新千歳一極集中を是正して、訪日外国人客を他の6空港に呼び込む必要があるために国際ゲートウェイ(GW)機能を拡大して旅客数の大幅増加を目指している。
今後は道内7空港の役割分担を明確にし、新千歳はグローバルGW、函館と旭川は広域GW、稚内、釧路、帯広、女満別は地域GW、と位置づけ、それぞれの空港の特性や潜在的旅客需要を踏まえながら戦略的に路線拡大を図り、旅客数の増加につなげる予定である。
また空港の魅力向上による地域活性化への貢献、地域産品の輸出促進等も意図している。さらに安全・安心を最優先とした長期安定の空港運営についても緊急時対応や保安レベルの向上に努めるとともに、空港周辺地域の自治体等との信頼関係の構築に努めるとのこと。
道内7空港の一括民営化は日本観光の未来にとって極めて重要な事業であり、着実な成功を期待している。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)