重点を置いた活動ー「歴史学習」や「平和学習」
日本修学旅行協会(竹内秀一理事長)は、中学校、高等学校が実施する修学旅行の実態をまとめた「教育旅行年報 データブック2017」を昨年12月に発行した。ここでは同書の調査データ「国内修学旅行の実態とまとめ(高等学校)」から「旅行内容」の項目を抜粋して紹介する。
重点を置いた活動
修学旅行で重点を置いた学習や体験を分類した分類別件数比率=グラフ1=を見ると、「歴史学習」が683件(33・3%)で最も多く、次いで「平和学習」が399件(19・4%)、「スポーツ体験」が302件(14・7%)で、この3分類内容で全体の67・4%を占めている。
重点を置いた学習や体験の具体的な活動内容を三つまであげてもらったものが表1である。これによると、1位「遺跡、史跡、文化財、寺社などの見学」、2位「平和学習」が毎回圧倒的に多く、「伝統的町並みや建造物群保存地区の見学」「スキー(スノーボード)」「自然・野外活動体験」「マリンスポーツ」が上位にきているが、活動内容は多岐にわたっており、各学校が実態に応じてさまざまに重点を置いた活動を実施していることがうかがわれる。
かつて重点を置いた活動であった「博物館などの見学」や「美術館などの見学」(2010年度はともに2位)は、ここ数年で大きく順位が下がっており、それに対して「いなか暮らし体験」「産業遺産の見学」や「ラフティング・カヌー体験」などが上位に上がってきている。「職場訪問、職場体験」「学校見学(大学、専門学校など)」など進路やキャリア教育に重点を置く学校も多くある。前回から「防災・震災学習」を項目にあげたが、今回14位、43件であった。
また、国内修学旅行の行き先に沖縄、北海道が多いことから「スキー」「自然・野外活動体験」「マリンスポーツ」「伝統文化、伝統芸能、祭体験」など、訪問地域の特性を生かした体験学習に重点を置く学校も多い。
旅行先
カウント方法は、滞在時間に関係なく、例えば滞在が半日であっても、2日であっても、初日と3日目であっても、行った旅行先を「1」としている。
都道府県別旅行先上位20=表2=を見ると、トップは前回に引き続き沖縄県で、2位東京都、3位京都府、そして大阪府、千葉県の順である。7位までの順位は3年間変わりがない。沖縄県は平和学習やマリンスポーツ体験など、東京都は首都の観光・学習、京都府、奈良県は寺社などの歴史学習、大阪府、千葉県は人気のテーマパーク、北海道は自然体験の豊富な素材などが大きな要因であろうか。
東北各県を見てみると、宮城県が9件で20位に入っており、その他は岩手県5件、福島県4件、青森県、山形県各1件、計20件で、前回(16件)より増加している。出発地は九州と近畿からが各7件、関東から3件などである。今後も震災学習を含め東北への修学旅行が積極的に検討、実施されることを期待したい。
各地方の学校がどの地方へ修学旅行に行っているかを表したものが表3である。地方別に多い行き先を見ると、北海道からは6割が近畿へ、東北からは8・5割が近畿へ、関東からは沖縄と近畿へ、中部からは九州と沖縄へ、近畿からは北海道と沖縄へ、中国、四国、九州、沖縄からは6~7割が関東へ行っている。中部は中学校の修学旅行が大部分関西と関東であるため、高校では九州、沖縄が多いと考えられる。
見学先、行動形態
表4、表5の見学先については、同じエリア内にある見学地は一つにまとめて記載している。(例=同じ公園内にある施設など)
見学先は「沖縄平和祈念公園、平和祈念資料館」が前回に引き続き1位で、10位までは前回とあまり変わりはない。旅行先都道府県1位の沖縄県の見学地が上位10位までに6カ所含まれ、前回と同様に人気の高さがうかがわれる。「法隆寺、薬師寺」が徐々に順位を下げてきているのは地理的条件も関係しているのであろうか。また、今回の調査でも前回までと同様に平和学習に関連する施設、テーマパーク、神社仏閣、さらに班別自主行動や体験学習が可能な個所、施設などが上位ランクに入ってきている。