BA日本市場の取り組み
関空ーロンドン線を再開 5ヵ年65億ポンドの投資実施
――日本との関係は。
「昨年、日本就航70周年を迎えた。1948年3月に山口・岩国に1便が就航して以来、55年に初めての日本人のキャビンクルー、95年にファーストクラスに初のフルフラットシート、2000年にプレミアム・エコノミーを採用するなど、日本とは密接で深い絆がある。現在は1日2便、羽田、成田に就航しており、機材、設備含め最新鋭のものを投入している」
――BAのビジネス環境について。
「グローバルな観点で言わせてもらうと、親会社のIAGホールディングスは、収益状況は良く増益を続けている。日本市場では、日本航空、フィンエアー、イベリア航空を共同事業パートナーとして、日欧間の運航管理やお客さまにチケットオプションを提供するなど、ヨーロッパの88都市をカバーできている。4月1日からは、約20年ぶりに関空―ロンドン線を再開し、週4便運航する。今後、日本ではラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック、大阪万博など集客できるビッグイベントが控えている。また、関西マーケットのポテンシャルも高く、ヨーロッパへの観光旅行、ビジネスの需要を期待している」
――5カ年65億ポンド(約9500億円)の投資計画を発表しているが。
「顧客サービスに掛かる全分野で投資を行う。地上部分、商品と分かれるが、地上部分はロンドン・ヒースロー空港では、ファーストクラスのお客さまに対して約2分でのダイレクトチェックインを実現する。航空機については入れ替えを行い、B787など最新鋭の機材を投入していく。騒音減少や環境への配慮は、航空会社にとってプラスであるとともに、お客さまへの快適性を高めることにもつながる。食事も大幅にアップグレードする。ワールド・トラベラー・プラス(プレミアム・エコノミークラス)では、2月1日からダイニング・メニューのオプションを三つに広げるほか、2度目の食事の際にも温かいメニューを提供する。日本食のメニューも刷新し、より食を楽しめるようにする。また、今春には、新たなアメニティ・キット、ブランケット、枕、今年後半には新たなシートの導入を予定している」
――日本の航空、旅行会社との関係性は。
「日本航空とのパートナーシップは良好で、共にお客さまに対して素晴らしい体験を提供できている。主要な旅行会社とも良好な関係は築けている。常に旅行会社とは、技術なども含めて常に考えながら、必要な進化を遂げていきたい」
――旅行のFIT化についてはどう見ているか。
「基本的に業界自体が多様だ。一番重要なのは、お客さまが何を欲して、何が必要かに気付くことだ。容易でスムーズで快適なサービスをどうできるかを突き詰めれば軸足を置くところは定まる」
――日本の地方との連携については。
「ヨーロッパのお客さまに日本について尋ねると、東京、京都でとどまる人がほとんどで、それが事実でもある。一方、ビッグイベントが起爆剤となり、大阪、神戸などにも関心は広がりつつある。これをきっかけに大都市以外にも広がることは考えられる。関東、関西以外にも取り組むキャパシティは保ちつつ、随時対応していきたい。今後は、関西を一つの起点として考えているが、ネットワークを広げる上で、地方とも機会があれば取り組んでいければと思う」
――日本の観光における課題は。
「問題を述べるよりも、まず日本には、歴史、文化、食など魅力的な資産がたくさんある。住宅、建築に関しても認知は上がっている。イギリス人は、異なる生活様式、生活のスピード感を体感したいと思っている。観光要素や経済資産があることを知ってもらえれば誘客につながると思う」
――日本で増えるインバウンドについてはどう見ているか。
「航空業界的に言えば、需要があれば機材の投入や就航回数の増加、さらなる効率化を図り対処はできる。一方、増える観光客に対してホテル、インフラなどが耐えられるかどうかだ」
――観光先進国であるタイとの違いは。
「大きな違いは、タイの場合は『ビーチに行く』『島で遊ぶ』『北部のジャングルに行く』など、観光、旅行の目的が明確だ。また、タイは昔から観光を目的に開発を行っている部分がある。しかし、タイに無くて日本にあるものはたくさんある。両国に訪れる考え方もある。私は、世界に誇れる雪質がある北海道へスキーに行きたい。日本ならではの良さを発信していくべきだ」
――中長期の計画は。
「業界は激変しており、来年のことを語ることは難しい。今年はBA100年。まずはこれを具体的に進めていく」
BA モラン・バージャー支配人
※モラン・バージャー=ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)およびイベリア航空日本・韓国・タイ地区支社長。2011年BA入社。13年ガーナのコマーシャル・マネジャー、15年南アジア地区支社長を歴任し、17年2月から現職。
【長木利通】