飛行機内でのサービスといえば、飲み物や食事を思い浮かべる方が多いと思いますが、客室乗務員に求められるのは、「接客要員」であると同時に、それ以上に大切なのが「保安要員」としての役割です。出発直前の打ち合わせでは必ず、担当する非常口の位置と、緊急着陸が海上の場合を想定し、脱出時に、同じ救命ボートを使う乗務員同士の顔と名前を確認し合いました。緊張の一瞬でした。安全運航が最大のサービスであるとの再認識の場でもあります。現在の手順などがどのようなものなのかは分かりませんが、「安全」が最優先事項であることは不変だと思います。
地上研修では、営業職の人に、「お客さまと接する最前線での対応次第で会社が判断される、その自覚を忘れないでほしい」との言葉をよくかけられました。このことは、全てのサービス業に通じることなのでしょう。
しかし、笑顔やおもてなしの心だけですむ仕事などありません。対応の基本となるのは、何といっても基礎知識です。それぞれの業務に即した知識の裏づけなくして、より良いサービスなどあり得ません。
基礎知識が不可欠なのはもちろんですが、同時に守備範囲を俯瞰する力も大切です。機内で毛布がほしいのに、目配りをしないため、お客さまの方から声を掛けざるを得ない。レストランでお願いしたいことがあるのに、スタッフが注文取りと片付けに追われ、こちらの様子に気付かないなど、まどろっこしい思いをなさったことはありませんか?
人員不足うんぬんというより、働く人の意識の問題です。要するに目の前の対応のみに追われて、全体を見回せないことによるサービス力の不足です。全体を見回し、「察する力」がサービス向上には欠かせません。「忖度(そんたく)」はサービス業にこそふさわしい言葉です。