直行便就航、誘客に追い風
2019年におけるインドからの訪日客数は対前年比14.2%増の17万5900人となり、過去最高を更新した。順調に成長を続けているインド市場と日本の間の航空路線において二つの大きな動きがあった。
一つ目は、南インドからの直行便就航である。日印間の直行便はデリーとムンバイからのみであったが、昨年10月27日からANAが南インドのチェンナイ―成田線の運航を開始し、JALも同じく南インドのベンガルールと成田を結ぶ路線を今年3月29日から運航開始する予定だ。
これまでインドからの訪日客受け入れに際しての課題と言われてきたことの一つが、ベジタリアン対応だ。14年のインド政府の調査によると、州別のベジタリアン比率は、最も高いラジャスタン州で74.9%、デリーは39.5%、マハラシュトラ州(州都ムンバイ)が40.2%に対し、タミル・ナドゥ州(州都チェンナイ)はベジタリアン比率が2.35%、カルナータカ州(州都ベンガルール)は21.1%と、南インドは比較的ベジタリアン比率が低いため、インドからの誘客を検討している自治体、宿泊施設などにとって朗報となるだろう。
二つ目の動きは、インドから羽田への直行便就航だ。昨年11月、JALとANAは、デリー―成田間で運航している路線を、今年の夏ダイヤから羽田にシフトすると発表した。これまでインドから直行便を利用して来日した訪日客は全て成田着であり、団体旅行客は東京・富士山・京都・大阪・広島といったいわゆる「ゴールデンルート」を旅行するのが一般的だ。国内線のハブである羽田空港に直行便が就航することにより、インドからの訪日客の訪問先が多様化することが期待される。
この機会を捉えてインドからの訪日をさらに推進するため、JNTOの協力のもと、ANAが羽田への直行便就航を紹介するセミナーをデリー市内で開催した。現地の主要旅行代理店から約60人が出席し、JNTOからは北海道、東北、九州、沖縄など、これまでインド市場で一般的であったゴールデンルート以外の観光地を紹介、ANAはデリー・羽田便の概要、国内線への乗り継ぎなどの利便性向上について情報提供し、新たなツアー造成などを働きかけた。
セミナー参加者からは、「羽田については名前も場所も全く知らなかった」「羽田の交通利便性の高さがよく分かった」「北海道などの新たな観光地を知ることができた」などの意見を聞くことができた。インドでは旅行代理店関係者の間でさえ羽田空港が知られていないことが分かったため、今後当所でもセミナーの開催などを通じて羽田空港の利便性や日本各地の魅力を積極的に情報発信したいと考えている。
順調に訪日客数が増加し、航空ネットワークの強化という追い風も吹いているインド市場。日本のインバウンド関係者の皆さまには、ぜひ、この機会に大きな可能性を秘めたインドからの誘客を検討いただきたい。