地域交流年、路線拡充が好機
2017年初めにビザが緩和されて以降、航空路線の拡大もあり、近年増加傾向にあるロシア市場。19年の訪日ロシア人旅行者数は、1月から10月までの10カ月で9万8千人となり、既に昨年の年計を超えた。
ビザ緩和に伴い増加傾向にある個人手配旅行、そして旅行会社を利用する富裕層、それぞれに訴求するべく、当所ではさまざまなビジット・ジャパン事業を行っているところであるが、ロシアで利用されているインターネット検索エンジン「ヤンデックス」における18年の「日本・ツアー」の検索数は前年比30%増、「日本・航空券」は53%増となったことからも、訪日旅行を具体的に検討する層が広がっているものと考えられる。
日本に地理的に近い極東ロシアにおいては、従来から旅行先としての日本の認知度は高く、リピーターも多い。一方で、欧州ロシアにおいてはまだ初回訪日者が多く、実際、観光庁が実施している訪日外国人消費動向調査によると、ロシア全体としても観光・レジャーを主目的とした訪日旅行者の半数以上が初回訪問であるという結果が出ている。
ゴールデンルート以外の地方への誘客はインバウンド全体の大きな課題である中、リピーターの多い極東地域に向けては、地方の魅力発信が2回目、3回目の訪日を促す契機にもなり、特に効果があると考えられる。そして、欧州ロシアからの訪日旅行では、滞在日数が10日~2週間という旅行者が多いことから、ゴールデンルートに加えてもう一歩、足を伸ばしてもらうための情報提供が重要になる。
特に欧州ロシアの富裕層に関しては、混雑した観光地を敬遠する傾向が強く、落ち着いて観光でき、日本の伝統を感じられる地方滞在の満足度が高い。駆け足で観光地を回るスタイルよりも、説明を聞くなどじっくりと各施設の滞在を堪能し、オーセンティックな日本(=本物の日本)に触れて理解したいという志向が強い。
そのため、富裕層を取り扱う旅行会社においてもゴールデンルート以外の情報を常に求めており、当地で実施した旅行会社向け商談会やセミナーの参加者からは、日本の地方自治体の参加により、詳細な情報提供を受けることで、スピーディーに顧客の求めに応じたルートを組むことができ、有益であるという声が多い。宿泊施設についても、富裕層の手配には細かい情報が必要であることから、直接コンタクトを取りたいという要望が強い。
20年は日ロ地域交流年であり、ロシアで数多くの日本の地方の情報発信が予定されている。併せて20年にはモスクワからの羽田発着便が開設され、地方へのアクセスが改善される。さらに、極東ロシアには日系エアライン2社が新規就航する。座席供給数が爆発的に増加する機会にロシアでのプロモーションを検討いただければ幸いである。
富裕層旅行を取り扱うロシアの旅行会社を対象とした招請事業の様子