旅館ホテル業において売り上げを上げる方法は、(1)既存顧客のリピート回数を増やす。(2)利用時の消費額を増やす。(3)新規顧客(見込み客)を開拓する。この三つしかない。それを実現するために、料理や接客の向上、設備投資、リアルエージェントとの関係強化、インターネットを活用した集客などを必死に行ってきた。また、同じ売り上げで利益を増やすためには経費を削減するしかないのは自明のことだ。
このことは、事業を行う者にとって「お客さま」は違えども、ほとんどの事業者に当てはまる。そんな状況下、現状を打破したい事業者がこぞって取り組み始めているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。旅館ホテル業においても国内旅行需要をいかに取り込むか、そして、コストをどのようにして削減するのかが課題であることを考えれば、DX推進を避けて通ることはできない。
経済産業省発表(2018年)のDX推進ガイドラインには「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。テクノロジーの導入と組織・業務改革の両輪で成長するというものだ。
まず必要なことは業務内容の明確化だ。部門ごとの問題点(非効率な業務負担など)を明らかにすること。DXの方向性を明らかにした上で活用できるシステムやツールを選択し、改善の優先度(すぐやるべきことは何か)を決定する。
〇営業部門では
部門ごとに存在する顧客情報を一元化し部門横断的にまとめ営業戦略を構築することが可能となる。中小事業者の場合、これまでのエクセル管理からファイルメーカーの活用に切り替えるだけでも簡単に効果が出るかもしれない。
気象、観光スポット、人気店などのリアルな情報を集約しSNSやペーパーで「今日のお客さま」に有効な情報として伝えることもできる。
新規顧客獲得についても、インターネットメディア(SNS、メディアサイト、ランディングページなど)を活用し顧客の興味を喚起し問い合わせ行動を促すことができるようになる。
〇管理部門では
仕入先情報、従業員情報などをデータ化しペーパーレスで一括管理する。税理士や社労士などとのやり取りも瞬時に可能となる。対応できない士業の選別が可能となり、地元以外の優秀な士業の活用ができる。
業務の外注化、従業員のテレワーク化を一層推進することにより業務の効率化が可能となる。
さらなるDX推進によって、部屋の稼働状況とスタッフのシフト・勤怠管理を連動させることができるようになるかもしれない。
物心ついてからの半世紀以上を振り返ってみても自家用車・新幹線・飛行機・家電・パソコン・携帯電話など新たなテクノロジーに支えられ未来に希望を持つきっかけとなったモノに囲まれてきた。これからもテクノロジーの進化による明るい未来を見てみたい。(EHS研究所会長)