【旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 145】新型コロナウイルスへの経営対応32 ホームページのてこ入れ3 佐野洋一


 (7)プランの表現

 「このプランを詳しく見る」というボタンを押してみる。すると予約システムのページに切り替わって内容が表示される。そこにある説明としてかなり多くあるのは、食事場所と料理のポイントをあっさり伝えるだけの通り一遍の文章。例えばこんな具合…。

 「お食事は眺めの良いダイニングでどうぞ。料理長が腕をふるった『特別○○会席』をご用意してお待ちしております」

 あとは料理の献立と、対応する客室タイプの選択肢が示されているだけ。

 そもそもプランとは「企画提案」ではないだろうか。お客さまの利用目的やグループ形態など―「何をしに泊まりに来るのか」に合わせて、「そんなあなたに、こんなプランをご用意しました」というものであるはずだ。やたらと特典を付ける、用意するものを変える、などの「やり過ぎ」は避けるべきだが、だからといって同じ説明文ばかりでは夢も希望もない。

 一般に、宿泊プランの核をなすのは料理と部屋タイプである。小さな旅館では料理を何種類も用意するわけにはいかないから、一つの料理にほぼ全ての部屋をひもづけることになる。また食事会場や料理パターンをいくつか持っているような中~大型の旅館では、まず料理コースがいくつか提示され、これにひもづけられた部屋タイプから選択するシステムになっているところが多い。

 理論的には多数のプランを作ることが可能…というわけで、特にOTA(ネット予約サイト)では、何十というプランを掲出している旅館もある。しかし、多すぎる選択肢はむしろ意思決定の妨げとなり、離脱を招く場合もある。

 そしていずれの場合も、部屋についての中身を見ると、みんな同じことが書かれていたりする。「○平方メートルの眺めのよいお部屋です」…果たしてこれを「プラン」と呼ぶべきか?

 20~30室程度の旅館なら、できれば部屋のタイプごとに、その特徴のアピールや過ごし方の提案なども加えたい。

 また規模に関わりなくおすすめしたいのは、自社サイトにおいて「プランのページ」を設けることである。トップページにいくつかプランを掲げている場合、そこからいきなり予約システムに行かせるのでなく、プランページでいったん受けて、そこで詳しい利用イメージを伝えるのだ。

 例えば、こんなことも書ける。若いカップル向けなら…。

 「翌朝、お天気が良ければ近くのお散歩はいかがでしょうか。30分ほどで見て回れる『お散歩マップ』もございます。歩いて5分ほどの場所にある○○神社は、縁結びのご利益があるといわれていますので、特にお参りをおすすめします」

 3世代家族向けなら…。

 「お夕食の後は、お孫さまも交えてカードゲームなどいかがでしょうか。フロントにはトランプをはじめ、各種のカードゲーム(無料)を取りそろえておりますので、お気軽にお申し付けください。売店ではおあつらえ向きのお菓子なども販売しております」

 プランの向こう側にいるお客さまには、さまざまな事情や期待がある。そこに思いをはせ、気持ちをこめて寄り添うことの手を抜くべきではない。HPやOTAを単なる自動集客マシンと思ってはいけない。

(リョケン代表取締役社長)

 
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