今年の3月に佐賀県が立ち上げたウェブサイト「さがすたいる」。
タイトルがいい。ふつう「すたいる」は片仮名で「スタイル」と表記してしまいそうですが、ソフトに見える平仮名表記にその心がありそうです。
サイトのキャッチコピーは「お年寄りや障がいのある方、子育て・妊娠中の方、誰もが安心して外出できる、やさしいまちのスタイル」。当事者たちが探しているお店の設備やサポートなどの役立つ情報をジャンルごとに紹介しています。目玉は、当事者の目線でお店を体験する「さがすたいるリポーター」の現地報告です。
サイトの担当者である佐賀県庁のユニバーサル社会推進担当の安冨喬博さんには、私は昨年の春にお会いしています。目鼻立ちがしっかりとしたりりしいお顔立ちの安冨さんが、ちょうどサイトの構想を練っていた時期でした。
既存のサイトがあるわけではない。マニュアルがあるわけではない。だから安冨さんは、来る日も来る日も当事者に話を聞いたといいます。
子ども連れのママさんからは「『飲食店では子どもがじっとしていなくて、ゴロゴロと転がるから、フラットなこあがりがあると使いやすい』『子どもが騒いだりすると他のお客さんの目が気になるので、個室があるお店を常に探している』と言われました」。車椅子ユーザーであれば、「テーブル席の方が使いやすい。そのテーブルは四角いものより円形が使い勝手がいい」。
それらのニーズを踏まえて、お店を1軒1軒調べた詳細な情報をサイトに記しています。また、そうした声を一般の人にも知ってもらうことも大切な目的とするサイトなのです。
安冨さんは「子育てのママが使いやすい店でもいいし、高齢者が使いやすい店でもいいし、全ての人に万全なお店なんてないんです」。
続けて「当事者それぞれに聞けば、どうしてほしいか話してくれます。100人いれば100通りのニーズがあるけれど、それでもそのニーズが重なっている部分もある」。
安冨さんが指摘される「重なっている部分」とは人の力。声掛けだったり、ちょっとした配慮だったりだと言います。
お店の掲載許可を得るときはこんなふうに誘ったそうです。「一つでも良い部分、または紹介したいところがあれば載せませんか。トイレが広いでもいい、子どもが遊べる場所があるでもいい、店のスタッフが気さく、それでもいいんです」。
ちなみに、こちらのサイトには「バリアフリー」という言葉は極力使われていません。それはバリアフリーという言葉一つでは表現ができない細やかな心配りの情報だからです。お店情報を型にはめない新しい情報発信サイト「さがすたいる」。これからも進化を遂げようとしています。
(温泉エッセイスト)