より多くの女性と若年層にバス乗務員を目指してもらうため、個別の事業者単位では既に取り組みが始まっている。
例えば、京王電鉄バスグループや神奈川中央交通などでは、一部の営業所(車庫)に女性専用の休憩、仮眠スペースを設置している。
地域の路線バスを担当する乗務員は休憩時間には営業所にいったん戻るように仕業(1日の乗務ダイヤ)が組まれていることが多いため、乗務員が営業所で過ごす時間が比較的長い。靴を脱いでくつろぐことができる休憩室が充実していることは、乗務員にとって重要なポイントだという。
神奈川中央交通は、制服をリニューアルする際、女性乗務員の声を反映させた。一般的な服装では細身のデザインが流行する中、すっきりした見た目と、体を動かしやすい余裕を持ったつくりとのバランスや、生地の重さなど、女性ならではの意見が多く出たことだろう。
女性乗務員を、特定の営業所に集中して配属させた事例もある。京浜急行バスは、羽田空港内の旅客ターミナル同士を結ぶ無料連絡バスの運行を担当しているが、この連絡バスに乗務するチームは女性がほとんどである。
ターミナルの周回道路は、公道ではあるがいずれも道幅が広く一方通行が多いため運転しやすい。歩行者の飛び出しや自転車のすり抜けといった事故の要因もあまり考えられない。
乗車無料であるため、複雑な運賃計算のルールや運賃箱の操作を覚える必要はない。その代わり、不慣れな乗客や外国人客も多いためホスピタリティを求められる。未経験者でもハードルが低めの業務である上に、集中して女性を配属すれば、休憩施設などへの投資も効率よく行うことができる。女性としても、周りに同性が多いことは安心だろう。
京成バスでは、本年6月に女性乗務員の総数が50人を超え、全体の3.4%にまで増加した。このように、個別の事業者単位でみると、施設の改修や採用活動などにコストを投下しやすい大手私鉄系事業者を中心に、女性乗務員の増加に向けて結果が出つつある。
(高速バスマーケティング研究所代表)