女性乗務員の増加とともに、若年層の取り込みについても取り組みが進んでいる。京王グループの西東京バスでは、高校卒業者を採用し、事務員や整備工場、接客などで約3年の経験を積み、21歳になると大型2種免許取得に挑戦し、合格すれば乗務員になれるという新卒採用を開始してから既に数年の実績がある。
高校新卒者の採用は、このような大手私鉄系事業者のみならず、最近では全国のバス事業者でも行われている。最近の若者は地元志向、家庭志向が強い傾向がある。
事業者によっては、21歳で晴れて乗務員デビューを果たした時点で、半分以上が既に結婚している、という年度もあるという。地元の路線バス事業者に入社すれば絶対に転勤もないし、公共交通機関として経営は安定しているし収入も悪くないので、中学時代の同級生らと「地元婚」する例が多いそうだ。
少子化が進行する一方で大学進学率が上昇しており、そもそも「高校新卒」の人数が大幅に減っている。そこで、大学新卒者を採用し、大型2種免許を取得させる事例も増えてきた。京成バスが2015年から開始したほか、地方部においても、九州産交バス(熊本県)が新たに大学新卒の乗務員採用を開始した。
中途採用において、大型2種免許非保有者に対し免許取得を支援する「養成」制度はかなり一般的となった。内々定者に対し免許取得費用を会社が負担し、免許取得後に正式採用とするケースと、先に社員として採用し、営業所や整備工場で研修を兼ねて勤務しながら免許取得を目指すケースがある。
中途採用者に職歴を尋ねると、営業職やシステムエンジニアなど運転とは直接結びつかない職種が返ってくることが多く、養成制度の成果を実感する。
このように「女性」と「若年層」の活用は、個別の事業者レベルでは成果を出しつつある。だが、前述のようにこの国全体の構造的な人手不足が乗務員不足の一つの要因であり、個別の事業者の努力だけでは問題解決に十分と言えないだろう。
(高速バスマーケティング研究所代表)