東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に共生社会を実現するべく、国の取り組みとして、2017年に「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が決定され、計画推進のための「ユニバーサルデザイン2020評価会議」が開催されています。
内閣官房東京オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会推進本部が事務局で、13もの障がい者団体の代表の方々がそろいます。内閣官房、総務省、厚労省、農水省、経産省、国交省、警察庁などの各省庁の担当者も同席し、ユニバーサルデザインを研究されている有識者メンバーで構成された会議です。
私はバリアフリー温泉、ユニバーサルツーリズムを取材し、発信している立場で、VISITJAPAN大使として、2016年から計画策定に参画しています。
この会議は当事者団体の発言を各省庁の政策につなげていくことが目的です。
障がい者当事者がこうした重要政策に大きく関わる会議で発言を求められるのは、東京オリパラの開催が決まった以降といわれています。
毎回、多数のテレビカメラが入ります。おそらくこれから、「共生社会」「心のバリアフリー」「ユニバーサルデザイン」という言葉が広く使われることとなるでしょうし、来年以降はこの動きが地方自治体へと広がっていくことになります。
「共生社会」というと堅苦しい印象があります。ですから私自身は、「だれだって温泉に入りたい」「ふつうに旅に出たい」「みんなで温泉に入るという身では混浴と同じ」、そんなふうに、気軽に身近なものとして考えています。あくまでも私のこうした活動は混浴を推進したことの延長線上にあります。混浴と並べて語ることに、大きな意味があると信じています。
そしてこれは超高齢化社会を目前にした、日本にとって最も必要な取り組みであると感じています。
先月は第3回の会議が開催され、会議後に当事者団体の皆さんから、「温泉入りた~い」と笑顔で話しかけてもらいました。解決が難しい話題が多い会議ではありますが、温泉や旅の話ではみんながほぐれる。温泉って、いいですねぇ~。私は各所で温泉に救われています。
あたたかいイメージの温泉、楽しむことを目的とした観光産業だからこそ、「共生社会」への深い理解への入り口になるであろうと感じます。
私的な話ではありますが、この会議へは積年の思いもあります。体が不自由だった妹がいる環境で育ち、母は障がい者団体の役員をしていましたので、役所にかけあう姿を私はよく記憶しています。ですから会議で当事者団体の皆さんが訴えかけるその姿は母と重なり、本会議に参画できることに目頭が熱くなる瞬間があります。
当事者が家族にいた私だからこそできること、マスメディアで仕事している私だからお役に立てることがたくさんあります。
これまで各地の運輸局や地方行政の皆さんからのユニバーサルデザインの啓発、啓蒙(けいもう)の講演に呼んでいただきました。東北運輸局さん、北信越運輸局さん、岐阜県、愛知県、秋田県、鹿児島県などです。
11月は観光庁さんからのご依頼で白馬で講演。12月には諏訪でも開催されます。
拙い話ではございますが、どこかの機会で聴いていただけたらうれしいです。
(温泉エッセイスト)