第73回「さっぽろ雪まつり」(2月4~11日)を見学した。札幌市制100周年記念の今年、3年ぶりの有観客開催に175万人が来場したとの報道。確かに多くの観光客でにぎわっていた。特に目立ったのが外国人観光客の姿である。ホテルも新千歳空港連絡バスも、さらにはサッポロビール園でも、インバウンドの急速な回復を肌で感じた。
北海道新聞社の大雪像「疾走するサラブレッド」は、プロジェクションマッピングで美しくストーリーが展開し、私たちを魅了した。雪のHTB広場にそびえた陸上自衛隊の「豊平館」やHCB広場の「エンブリー荘」は、その雄姿と精巧さに、多くの人たちが息をのんだ。間もなく開業予定の北海道日本ハムファイターズの新球場「Fヴィレッジ」の雪像や、エンゼルス・大谷翔平投手の雪像前で写真を撮る人たちも多く見受けた。大勢の外国人観光客が雪まつり会場で、はしゃいでいる様子が、なんともほほえましい。道行く外国人に写真を撮ってと頼まれて、何度もシャッターを押した。
ここで気になるのが、インバウンド人材の新たな獲得だ。
去る2月16日、JSTOジャパンショッピングツーリズム協会の月例会で、「今までとここが違う!新・インバウンド人材の育て方」と題して講演をした。有能な新人材の獲得は争奪戦で、関連企業においては喫緊の課題である。
今、ちまたでは2024年卒の就職活動が進んでいる。Z世代といわれる彼らは、コロナ世代であり、リモート世代ともいえる。大学入学とともにコロナがまん延し、入学式が急きょ、中止になった。青春を謳歌(おうか)するはずの大学2、3年次は遠隔授業で、サークル活動やゼミ合宿が制限されるなど、友人関係、上下関係が希薄なまま大学生活を過ごした。海外研修は見送られ、留学や海外旅行を断念したものも少なくない。グループワークなどのPBL型教育は完全オンラインで実施し、ブレークアウトルームが数少ない発言の機会になった。また、語学系の対面授業率が下がった時期でもあり、語学堪能な人材が乏しいのが特徴だ。今春入社の新社会人から向こう3年、こうした新卒生を受け入れることになる。
受け身の姿勢が顕著で、承認欲求が強い世代ゆえに、受け入れる側の企業は、価値観の違いを理解しながら新人教育をする必要がある。かつて新社会人に対して「指示待ち型」という皮肉な表現が跋扈(ばっこ)したが、今では明確な指示をしない方が悪いのである。オンラインで学んだ学生たちは、「明確な」答えを求められてきた。曖昧さや丁々発止、機をみて敏は、辞典にない。
これからのインバウンド人材の育て方は第一に、「見て覚えさせる」が重要で、新人には年齢が近い「ロールモデル」を設定する必要がある。
活字に慣れず、おうち時間ではTikTokやYouTubeなど動画で知識を得てきた。上から目線で指示をしたり、マニュアルを読ませても、理解する前に転職されてしまうだろう。政府はインバウンド消費額を25年、コロナ禍前を25%上回る、1人当たり20万円に引き上げた。高級品を扱うラグジュアリー人材の育成も急務のときにあると言えよう。
(淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子)