「杜の賑(にぎわ)い沖縄」が、3年ぶりに帰ってきた。136回を数える杜の賑いは沖縄開催としては38回目というロングラン。夕刻からの第2回公演を鑑賞した。
これまでは宜野湾の沖縄コンベンションセンターが会場だったが、今回は県庁前からも歩いていける那覇文化芸術劇場「なはーと」での初開催で、それも気になりチケットを買った。
沖縄本土復帰50周年記念と、JTB創立110年の記念を兼ねるとあって、多くの“杜賑ファン”で埋め尽くされた。
四つ竹大群舞に始まり、琉球獅子舞や終演前の一大創作エイサー、進取のヌンチャク・サイやラップ音楽も新たに加わり、これまでにない演出で会場は沸いた。
特に驚いたのが、特別ゲスト・オリンピック金メダリスト演武が加えられたこと。あの喜友名諒さんはじめ空手道を極めた3氏が、気迫のこもった演武を披露した。司会者の「舞踊と武道は密接な関係にある」という説明に、妙に納得がいった。
伝統舞踊や民俗芸能は伝承性に高い価値がある。そこに創作性が加わることで、さらに違った魅力が増すのだと杜の賑いは教えてくれた。邪道と言ってしまえばそれまでだが、継続は力なりで今ではすっかり、沖縄を代表するイベントに成長した。演出家の鷹の羽辰昭さんには感服するばかりだ。
前回はコロナ禍前の2020年1月に開催され、首里城再建がテーマの雄大かつ荘厳なものだった。鑑賞後に早速、首里城公園を訪ねたが、焼失した姿も生々しく切ない気持ちになったものだ。それぞれの回にストーリー性や特色があり、何度観ても飽きない。
大成功の今回も、あえて課題を述べるなら二つ。一つは、沖縄コンベンションセンターでみられた観覧席の脇を踊り手たちが練り歩く臨場感や迫力がコロナ対策で、同会場ではみられなかったこと。地元の人たちは、会場併設の駐車場がないことに不満の声もあった。もう一つは背広組。3階席から背広を着て鑑賞している人たちがどれくらいいるかを数えてみた。すぐに関係者と分かる。世界水準のリゾートを目指す沖縄で、昭和の時代でもないのだから、伝統衣装「かりゆし」でそろえれば華やぎも増す。会場入り口に背広姿で立つ人が観客来場者を出迎えるのかとおもいきや、背広組同士で派手にあいさつを交わしていた。遠来の客人もいる。お客さまを温かく迎える雰囲気があったらよかった。
さて、閉幕後は、同イベントの舞台づくりを長年、手がけられた平敷幸春さん、綾さん父娘と会場近くで一献した。県の委員をしていたころに筆者を担当くださったのが綾さんで、杜の賑いを介した奇縁から、家族ぐるみで親しくさせていただいている。
かつて綾さんの結婚式にお招きにあずかったときのこと。皆で舞台に昇ってカチャーシーで盛り上がる。沖縄流の派手婚に度肝を抜かれた。一番印象的だったのは、披露宴会場に杜の賑いテーマ曲「花咲かり恋咲かり」が流れたときのこと。お父上は感極まり、目に涙を浮かべていた。
スポットライトを浴びる人、裏方で成功を支える人、そして観衆がいる。芸能の沖縄は、市井の人一人一人が主役である。次回の杜の賑い沖縄が今から楽しみだ。
(淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子)