新米の季節がやって来た。この時期、いろいろな産地の新米を食べ比べるのが楽しみの一つ♪ 地域によって、新米の出荷時期は違う。7月ごろ、沖縄と九州南部から始まり、8月に入ると九州から近畿、東海、北陸、9月ごろには関東から東北、北海道へと北上する。
また産地だけでなく、早く成長する早生(わせ)、遅い晩生(おくて)、その中間の中生(なかて)など、品種によっても収穫時期は異なる。例えば、超早場米の産地として名高い鹿児島県では、2月から3月に田植えを行い、出荷は7月。米の大敵、台風の影響を避けるのが目的で、そのために早く収穫できる早生品種を栽培しているそうだ。
それにしても、新米って今年収穫したお米に違いないけど、秋に出回るというイメージがあるだけで、一般的にいつからいつまで流通しているのか、正確には意外と知られていない。
農林水産省が提示している定義は、次の通り。「原料玄米が生産された当該年の12月31日までに精白され、容器に入れられ、若しくは包装された精米」。
つまり、大みそかに精米されたものは新米を名乗れるが、午前0時を境に元旦になって精米したものはそれが許されない。じゃあ、精米している途中に日付が変わっちゃったらどうなの?なんて意地悪なツッコミを入れたくなるが、もしこの「食品表示法」で基準が定められていなかったら、古米どころか古古米や古古古米を、新米と偽って販売するような悪者が出てくるに違いない。
新米の最大の特徴は、水分含有量が多いこと。だから炊くと米粒がふっくらツヤツヤになる。また、貯蔵時間が短いため、香り高い。炊きたての新米を思い浮かべてほしい。ふくよかなご飯粒がピカピカに輝き、何とも言えない甘い匂いが漂う。想像しただけで、思わず唾液が出てしまう。
その唾液が、イイ仕事をしてくれる。お米の主成分は炭水化物。そして炭水化物には多くのデンプンが含まれるが、実は糖質のクセにあまり甘くない。だが、唾液に含まれるアミラーゼがデンプンを分解すると、麦芽糖(マルトース)に変化。これこそがご飯の甘味の正体で、甘さは砂糖の50%ほどもあるそうだ。かめばかむほどご飯が甘く感じるのはそういうワケ。新米も、おいしそうな見た目と香りに誘われて唾液があふれ、口の中に甘味が広がるからウマイと感じるのだ。
残念ながら、新米にも欠点がある。水分が多いから、カビが生えやすいなど貯蔵性が悪い。また、米粒が軟らかいから、研ぐ際など割れやすい。
難しいのが炊飯時の水加減だ。新米は水の量を減らせと昔からいわれるが、イマドキお米の水分量を調整できるようだし、品種によっても違う。だから初挑戦の新米は、まず試しに炊いてみるしかない。炊き上がって鍋のふたを開けるときは、超スリリング! でも、そこを乗り越えれば、ふっくらツヤツヤ香り高い新米がいただける。
新米の後に流通する古米は、食味などが劣るのだろうか? 続きは次号で!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。