【体験型観光が日本を変える256】「衣・食・住・観」の時代 藤澤安良


 ロシアのウクライナ侵攻は激しさと残虐さを増すばかりである。その愚行に対抗して西側の経済制裁も広がり続けてはいるが、ロシアへの影響は、効いているといわれてはいるがはっきりしない。制裁をしているはずの西側諸国も原油や天然ガスや小麦などの輸入先であることから難しい局面を迎えている。

 それらの影響もあり、新年度を迎え日本でも原油や小麦の高騰を契機に、食料品をはじめとするあらゆる物価の上昇が始まった。

 新型コロナウイルスの影響で減給や賞与の出ない企業もあるなど、給与所得が上がっているわけでもない中での値上げは消費者離れの心配が付きまとう。二十数年ぶりの値上げとなった商品もあるなど、企業にとっても苦渋の選択であるのは間違いない。

 この上は、税制や最低賃金アップや富の分配方法など社会システムの変革を含めて、国民の所得向上が求められており、政治力での構造改革が必要になる。

 観光産業は衣食住をクリアした後の可処分所得で動いてきた傾向がある。つまりは、旅行消費額は経済的な豊かさのバロメーターでもあった。しかし、生活の基本は衣食住はもちろんであるが、心の豊かさこそが大切であるとの認識が拡大している。そしてその心の豊かさを感じるには、体験交流を中心とした観光が大きな役割を果たすことになる。

 つまりは、「衣・食・住・観」時代である。しかし、そこに新型コロナの感染者拡大という大きな壁が立ちはだかっている。感染者数は緩やかな減少傾向ではあるものの、ここに来て過去最高を記録する県があるなど予断を許さない状況が続く。

 しかし、19日には山際新型コロナ対策相が、3年ぶりにゴールデンウイークは行動制限をかけない考えを表明した。航空会社も新幹線も予約状況は昨年より大幅に増えているという。

 海外旅行も3月26日から屋内でのマスク着用義務が廃止され、飲食店でのワクチン接種証明、または陰性証明確認義務も廃止、ほぼコロナ前の日常に戻ったハワイを筆頭に北米を中心に動きだしている。

 さらに、日本でもマスク着用の可否を議論しようとする動きがある。そのように人流が活発になると連休明けが心配になる。

 過去に何度も油断から次の波を呼び込んだ経過がある。ここはひとつ、ロックダウンの上海にならぬよう、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のような行動制限に至らぬように感染者が激減するまでは、換気・間隔・消毒・マスクは継続しながら行動することが必要である。

 プロ野球も歓声ややじはないものの観客を入れて行われている。選手も観客も有観客の有難さをかみしめている。そのためには、政府は3回目のワクチン接種を推進し、経口薬の普及と4回目のワクチン接種に備えて準備を進めなければならない。

 そしてわれわれ国民は、できる対策は講じて社会経済を動かしながら、国民の生活の一部になりつつある観光を動かす知恵と行動が求められている。戦争の即時停止とコロナの収束を願い続けて、やれることからやろう。

 
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