【体験型観光が日本を変える 61】体験交流の理念曲げるな 藤澤安良


 名古屋に数日滞在した。名古屋城はあるが、冬の観光地としては、他に訪れる場所も考えにくく、弱いように思えるが、街には外国人が目立つ。街観光で買い物や飲食に消費行動が動いているのかもしれない。

 次の日には、折からの寒波で銀世界の長野県松本に降り立った。駅前のそば屋で昼食をとったが、欧米系の数人がざるそばを注文している。われわれほどおいしそうに食べていなかったと思うが、ここまで来ているのかと驚く。

 そのまま京都に向かったが、京都はやはり特別である。真冬の寒さが身にしみる京都ではあるが、非公開文化財の特別公開などがあるキャンペーン「京の冬の旅」が奏功し、多くの人が駅のコンコースを行き交う。半数が外国人と思えるぐらいで、ごった返している。日本の経済を訪日外国人が引っ張っているのではと思う光景である。

 残念な光景も目にする。名古屋駅前の交差点に10人乗りぐらいの白いワンボックスカーが路上駐車している。運転手は車の近くにいるのではと思うが、道路交通法違反が明らかで、常識では考えにくい駐車場所である。車のナンバーは関西空港周辺のものであった。乗車する姿は見ていないが、私の先入観では“お友達”を乗せるという白タクのイメージと重なる。偽造国際免許証の実態も徐々に明らかになりつつある。 

 経済的には有り難くても、日本のモラルやルールから大きくはみ出す外国人は、このまま放置すれば、せっかく構築されてきた日本人の生活文化を乱すように思えてならない。家庭に置き換えれば、見ず知らずの他人がやってきて好き放題されるのと変わりない。経済優先で遅れている分野ではあるが、日本での交通法規や公共交通機関の利用方法、そして社会通念上のモラルやルールを徹底するような情報発信をしなければならない。

 外国人の訪問が増えて、日本の今までの社会システムや法律では想定していなかったり、不具合が起こったりすることも多々ある。法整備を含めて早急に対応しなければならない。

 ホームステイにおいても、近隣国の児童生徒の一部には、横柄でわがままで、国際交流や日本文化を学ぶ姿勢がないものもいる。その国の信頼を損なうことになりかねない。受け入れ条件などをしっかり提示すべき。趣旨にそぐわない客まで受け入れ、嫌になるようなことにはしたくない。

 しかし、日本人自身がそのモラルやルールを乱すような行為があれば、外国人に遵守を要求できるはずもない。自らも襟を正す機会とすべきである。グローバル化や国際交流の拡大は、訪問国の文化を尊重し、互いの国や人々が心を高め合う関係でなくてはならない。中でも、重要視されつつある次の観光ステージである体験交流では、安易に迎合することなく、理念を曲げることなく、日本の主張を貫き通さなければならない。それこそが、日本の真実であり、魅力であるはずである。目先の経済効果はありがたいが、もっと大切なものがある。

 
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