【体験型観光が日本を変える 144】ワンチームで祝った祝賀御列の儀 体験教育企画社長 藤澤安良


 天皇の「即位の礼」に続いて、台風の影響で延期になっていた「祝賀御列の儀」が10日、実施された。晴天の沿道には約12万人の老若男女が小旗を振りお祝いをした。両陛下も、にこやかにほほ笑みながら手を振って応えられた。平和の尊さを感じる瞬間でもある。

 過日閉幕したラグビーワールドカップ(W杯)では、ワンチームになった日本チームのめざましい活躍により、多くのにわかファンができて、日本中が大いに盛り上がった。ラグビー関連のいくつかの言葉が流行語大賞にノミネートされることになった。その結果、オリンピックのマラソンと競歩の開催地を札幌にするなどの話し合いの場面でも、とても一つになっているとは思わないが、ワンチームが使われた。

 今回のパレードを現地で見た人やテレビの視聴者も、国民がまさにワンチームとなってお祝いし、喜びを新たにしたのである。人間として感動し、喜ぶ場面は万人として共通であり、共有できるものが多い。その意味では、体験型観光、あるいは体験プログラムの教育効果と同様である。

 観光産業の中でのマーケティングなどと言われる話の中で、ターゲティングや「ターゲットはどこに置いていますか」などと、男女別、若者や中高年、国別や居住地などに分けたり、絞ったりと、分かった風な口を利く人がいる。実は本質を分かっていない証拠でもある。

 ツアー設定なら発着地は国別や居住地で異なるが、受け入れ地側にとっては、その隔てはマーケットを自らが狭くして可能性を排除する行為に他ならない。その種の私への質問ではターゲットは「地球人」であり、今のところ他の惑星人までは狙っていないと答えている。

 アウトドアスポーツのラフティングでは74歳のおじいさんとその孫10歳が体験したが、感想は全く変わらずどちらも、「とても楽しかった。またやってみたい」と言う。

 炭焼き体験では20歳の女性と同時にやった70歳の男性が「とても勉強になった」などとほぼ同じ評価であり、男女や年齢で絞ることが無意味である。

 また、農山漁村での教育民泊では92歳の1人暮らしのおばあさん宅に16歳の高校生が訪ねることがある。年齢差を超越してコミュニケーションが図られている。さらには、異年齢交流によって、時代の流れの中で価値観や暮らしぶりの変遷を深く理解することとなる。同年代で固まれば、「分かる、分かる」と言って話は通じやすいのは確かであるが、それは同調による安心感に過ぎない。知らないことや差や違いを知る、そしてそれを理解することが学びであり、感動である。

 人が高まる機会とはそういう場面に出会うことである。男子高校生が滞在先の家庭で、およそ似合わない煮染めを作って食べるプログラムでの感想で「味覚が大人になった気がする」と言って食べていた。体験値のない誰かの固定概念でターゲットを論ずることは、観光を滅ぼすことになる。

 人々は志向で動く。市場拡大には、新たなる可能性と挑戦の機会を与える適切なプロモーションが必要になる。

 
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