【交通トレンド分析32】全席指定席化の流れの中、東海道新幹線には自由席 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 最近では首都圏のJR在来線特急において、常磐線特急の「ひたち」「ときわ」、中央線特急「あずさ」「かいじ」などが全席指定席となった。新幹線では、東北・北海道新幹線「はやぶさ」「はやて」、秋田新幹線「こまち」、北陸新幹線「かがやき」が全席指定席であるが、日本の大動脈である東京駅と新大阪駅を結ぶ東海道新幹線では、全列車に自由席を設置している。

 東海道新幹線は全て16両編成で、「のぞみ」は1号車から3号車の3両、「ひかり」は1号車から5号車の5両、「こだま」は原則10両が自由席だ。のぞみは、運行を開始した1992年当時は全車指定席だったが、本数が増えたことにより、2003年からは自由席を設置するようになった。

 自由席を設定しているメリットはいくつかある。一つは事前に乗りたい列車を決めなくて済むという自由さだ。自由席特急券を購入しておけば、駅に到着後すぐに発車する新幹線に乗れる。ただ、混んでいるときに座れないというリスクはある。

 二つ目のメリットとしては、東京駅や新大阪駅など始発列車が発車する駅であれば、発車前にホームに並ぶことで座れる確率も高く、列車によっては指定席よりも空いていることもある。筆者自身の経験では、窓側席が満席で取れない時など、少し早めに東京駅に行くことで自由席の窓側を確保できる可能性が高く、むしろ指定席よりも快適なこともある。また、全車指定席の場合は満席になると立席特急券が発売されるが、基本的に立って移動するしかないが、自由席があれば、年末年始の繁忙期などでも何本か待つことによって自由席に座れるなど、柔軟に対応することができるのも魅力だろう。

 ただ、東海道新幹線でも品川駅、新横浜駅、名古屋駅、京都駅などから乗車する場合には、やはり指定席を確保しておいた方がいいと思う。

 現在、東海道新幹線では、JR東海のネット予約「エクスプレス予約」が浸透している。エクスプレス予約の場合は、基本的に指定席と自由席が同じ料金になっていることから、ほとんどの人が指定席を使っているのが実情だ。

 だが、柔軟に乗れる自由席のメリットを生かし、筆者も料金は同じであるが、乗りたい新幹線が満席の場合や窓側席が確保できない時などは、あえて自由席を購入することもある。実際、逆に自由席の方が好きな席をその場で選び、気ままに移動できるという声もある。

 最近の流れは全席指定席化であるが、今後も新幹線や特急列車の自由席はぜひ残してもらいたいものだ。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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