日本政府が海外渡航者向けの新型コロナウイルスのワクチン接種を証明する「ワクチンパスポート」の発行が7月26日に開始されて約1カ月が経過した。8月25日現在において「ワクチンパスポート」が入国時に適用できる国は25の国と地域に限定されている。
基本的には「ワクチンパスポート」を持っていることでワクチン接種の証明書になるとともに、多くの国で入国の際に義務づけられているPCR検査の陰性証明書に代わるものとして、海外渡航時の救世主となる証明書として期待されている。日本人の渡航者が多い場所で言うと主にヨーロッパ(ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアなど)が対象国となっている。
使用できる国が非常に少ないということに加えて、現在は紙での発行のみとなっている。まだ電子化がされておらず、早くても今年の年末ごろになる予定だ。
筆者も実際に「ワクチンパスポート」を住民票がある自治体の市役所で取得した。驚いたのは、普段住民票が発行される紙と同じものが使われており、日本語と英語の両方で書かれているが、仮に海外で偽物と疑われても、本物のワクチンパスポートであることを証明することは簡単ではないという点だ。というのも、証明書でありながら発行者のサインもなく、必要な情報だけが書かれている紙でしかなく、少なくても証明書らしい少し厚めの紙(日本国内全て統一した専用台紙)を使ってほしかったというのが率直な感想である。
筆者は今回、アメリカへの渡航であったことで、入国に必要な書類として「ワクチンパスポート」を使うことはできず、PCR検査を日本出発前に受けてからの渡航となったが、海外滞在中に訪問先でワクチン接種の有無について質問があった際には非常に役立つものであるということも感じた。
ホテルやレストランなどについては公的なルールが適用されることから、それに従うことになるが、例えば海外出張で出張先のオフィスへの出入り、工場に入る時などにおいて、独自のルールでワクチン接種者のみもしくは直前にPCR検査を受けた人のみ入ることができるといったケースも海外では増えている中で、少なからず日本政府が発行している「ワクチンパスポート」の提示でワクチン接種したことを認めてくれることが今後増えてくることになる。
そういった点でも、海外出張・海外旅行を問わず、海外渡航ができるようになった際には海外出発前に「ワクチンパスポート」を取得しておいて損はないだろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)