EYは13日、最新の消費者動向調査「第9回 EY Future Consumer Index」を発表した。
・回答者の52%がコスト高騰が自身の購買能力に影響していると言及
・回答者はモノの購入よりも「体験」を優先
・回答者の42%が自身の価値観と一致するブランドのみ購入すると回答
EYは、最新の消費者動向調査「第9回 EY Future Consumer Index」(以下、「本調査」)を発表しました。本調査によると、パンデミック後に訪れると思われた明るい世界へのかすかな希望の光に、過去数か月の間に高まった景気の先行き不透明感が影を落とし、消費意欲が再び減退していることが判明しました。なお、本調査は、2022年2月に1万8千人の消費者を対象に世界中で実施されました。
本調査では、世界中の回答者の52%が、商品およびサービスの価格の値上りが購買能力に影響を与え、購入の意思決定を左右していると考えていることを明らかにしています。価格の値上がりは、必然的に低所得者層に最も大きな打撃を与えますが(62%が購買能力に影響が出ていると回答)、中所得者層の48%、高所得者層の42%でさえ、家計が圧迫されていると捉えていることが本調査によって明らかになりました。新興市場の消費者は、自身が窮地に立たされていると強く感じており、回答者の62%(南アフリカで 77%、インドで 64%、ブラジルで 63%、中国で 42%)が購買品の選択に影響を与える要因として値ごろ感(アフォーダビリティ)を挙げています。一方、同様の回答は、先進国では45% (米国50%、カナダ 52%、英国 42%、フランス 40%)に留まりました。
インフレによる価格上昇と新型コロナウイルスの新たな変異株が出現する可能性が大きく影響して、消費者は今後も引き続き消費を抑制し、より安価なものを求め、なるべく不必要なものは買わない姿勢を継続すると、本調査は示しています。回答者が以前より支出を抑えている対象は主に、衣服(回答者の38%)、美容・化粧品(35%)および酒類(30%)となっています。多くの消費者がすでに生鮮食品(20%)、加工食品(19%)についてより安価な商品を探し求めている状況です。
増加する生活費への不安感から、将来に向けて貯蓄を増やしたいと考えている回答者は全体のほぼ3分の2 (60%)に上りました。そして全回答者の39%が、お金を使うことよりも貯蓄することを目標としていました。最も貯蓄傾向が高いのが南アフリカ(南アフリカの全回答者の56%)、インドネシア(54%)、およびメキシコ、ブラジル、アルゼンチン (各 51%)でした。
EY グローバル Consumer リーダーKristina Rogersのコメント:
「多くの国でパンデミック後に景気が回復しているにもかかわらず、インフレ率の上昇、消費者の仕事とプライベートの生活における根本的な変化、最近世界で起こっている地政学的な問題から生じる不安の高まりによって、消費者の将来の見通しは楽観的なものではありません。消費者の購買力が低下し、先行き不透明感が高まる中、消費者は『あるといいもの』だけでなく、日常不可欠な商品についても、自身の購買の選択肢を見直さなければならない状況です」
消費を促進させているのは「モノ」よりも体験:
本調査によると、消費者は、コロナ禍で失われた時間を取り戻すと同時に、コロナ後の世界のプレッシャーからの逃避を求めて、今まで以上に体験を求めていることが判明しました。 回答者の45%が、これまで以上に、今という瞬間を生きるつもりであると回答しています。
広い意味で支出の鍵となる5つの優先事項である「地球(環境)ファースト」、「値ごろ感(アフォーダビリティ)ファースト」、「体験ファースト」、「健康ファースト」、「社会ファースト」のうち、「体験ファースト」の伸びが最も大きく、2020年の2倍となっています。コロナ禍が始まった頃には、消費者が何にお金を使うかを決定する際、体験の優先順位は最も低かったのものの、今では3番目に高い優先事項となっています。
体験を優先事項として挙げる回答者の割合が最も高い国は、米国(24%)、フランス(26%)、インド(31%)タイ(32%)となっています。一方で、フィンランド(13%)、オーストラリア(15%)、ニュージーランド(10%)では、体験を優先事項に挙げる回答者の率が最も低くなっています。今後1年で体験にこれまで以上にお金を使う予定だと答えているのは、全回答者の42%に上ります。しかし、39%の回答者が自宅以外での体験に消極的なため、彼らにとっては体験は自宅でできるものでなくてはなりません。思い切って外出している消費者は、以前より多くのものを実店舗に求めています。3分の1以上(36%)の回答者が、とても満足のいく体験を提供する実店舗にしか行かない予定だと回答しています。
さらにRogersは次のように述べています。
「消費者の心をつかむことは以前より難しくなっており、力関係はブランドから消費者へとシフトしています。消費者は元々、必要に駆られてモノの消費から体験の消費に移行したのですが、今では体験の消費を積極的な選択肢だと考えています。消費者に最も魅力的に映る体験のタイプは、アクセスが容易で、時間の投資が最小限で済むものです。企業は、オンラインと実店舗の両方で、どのようにして、より魅力的で臨場感あふれる体験を消費者に提供できるのか、真剣に検討しなくてはなりません。なぜなら、実店舗でのパーソナライズ化された接客を通してであろうと、メタバースのパーソナライズ化されたブランド・ユーザーインターフェースを通してであろうと、消費者の要求は、「モノの所有」から「体験」へとシフトしているからです」
消費者はサステナビリティと自身の価値観を購買の指針としている:
購買の意思決定要因としては、2期連続で、回答者の大半が環境(26%)を第一に挙げていて、値ごろ感(24%)と体験(20%)を上回りました。特に中国とブラジルでこの傾向が顕著で、両国の回答者の32%が、購買決定の要因として環境を第一に挙げています。
消費者は、グリーン購入を選択し、環境を保全するために自分たちでできることを行っています。回答者の56%が、自らの購買行為が環境にもたらす影響についてこれまで以上に関心を持つと、52%が社会的インパクトにより注意を払うことにコミットしていると、答えています。また、5分の2の回答者(42%)が、自分の価値観と合致する企業(ブランド)からのみ購入すると回答しています。Z世代ではこの数値と全く同じ42%が、そしてミレニアム世代の48%も、自分の価値観と合致する企業からのみ購入すると回答しています。
またRogersは、次のように結論付けています。
「人々は、過去2年間の経験を活かして、自身の生活スタイル、これまでの消費主義に対する考え方、および購買の決め手となる価値観を根本的に見直しています。使えるお金が以前より少なくなっていて、経済的、地政学的不安が増大している中で、消費者はますます環境を意識するようになり、自身の購買選択がもたらす社会的インパクトにより関心を持つようになっています。こうした傾向によって、消費者は企業に支払ったお金に見合った価値を求めるだけでなく、自分が手に取る商品を販売している企業の価値観が、自身の価値観と合致することを求めています」
EYJapan消費財・小売マーケットセグメント・リーダーの平元 達也(ひらもと たつや)のコメント:
「我々の生活は新型コロナウイルス感染症の影響により激変し、消費者は多くの我慢を強いられる期間を過ごしてきました。ようやく平時の生活に戻れるという希望が見えてきたタイミングで、急速なインフレの進行、地政学的リスクの顕在化といった問題により、消費者は購買における保守的傾向を一層、強めています。日本の消費者は、世界の消費者と同様に、購買の意思決定において、『値ごろ感』(30%)を優先している一方で、特徴的に、『健康』(32%)への意識が高く、また、『環境』(12%)への意識が低いという結果になっています。過去2年間において、世界の消費者にとって『健康』の重要性は、パンデミックの出口が見えてくるに従い低下傾向にありますが、日本の消費者にとって『健康』の重要性は高止まりしています。この傾向は、コロナ後も継続すると思われます。消費財企業が国内消費者から選ばれるためには、「健康」への配慮が不可欠です」
EY Future Consumer Index の最新版は以下をご覧ください。
Future Consumer Index︓人々は自らの価値観を再定義している | EY Japan
2022年3月17日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
EY Future Consumer Index: Growing economic uncertainty and rising costs dent post-pandemic hopes | EY – Global