首都圏の通勤鉄道で、つくばエクスプレスほど爽快な路線はありません。関東平野を突っ切る見晴らしのいい高架橋を、最高時速130キロという速度でかっ飛ばすのが魅力です。
ただ、終点のつくば駅に着いてしまうと、することがないのが難点でしょうか。つくば駅周辺は研究都市独特の雰囲気が興味深いのですが、観光地は少なく、旅行者向けではありません。筑波山あたりまで延伸してくれたらいいのにと、訪れるたびに思います。
その延伸が、ひょっとすると実現するかもしれません。茨城県が、つくばエクスプレスの茨城県内延伸について、今年度予算で調査をするからです。
対象となる延伸方面は、筑波山、水戸、茨城空港、土浦駅の四つ。それぞれ需要予測などを調べます。
筑波山方面に伸びれば、東京都心から筑波山までが1本で結ばれます。京王電鉄における高尾山のような位置づけで、電車でアクセスできる手軽な山として人気を集めそうです。水戸まで伸びれば、東京・水戸間の都市間輸送を担う路線に成長するので、常磐線特急に匹敵する有料特急が誕生するかもしれません。茨城空港に延伸すれば、都心からの空港アクセスが劇的に改善します。土浦駅までの延伸には派手さはありませんが、終点から乗り換える路線があることで、利用方法が広がるでしょう。
個人的には、筑波山への延伸を熱烈に支持したいですが、どれほどの需要が見込めるのか定かではありません。日帰り登山は楽しいですが、登山客が毎日電車に乗ってくれるわけではないからです。鉄道新線は通勤客が少ないと成立しないのが、厳しい現実です。
つくばエクスプレスは、都心方面への延伸計画もあります。秋葉原駅から東京駅までの2キロです。こちらは通勤需要が見込めそうですが、建設に巨費がかかるので、費用対効果に難があります。
そこで、東京駅から晴海や有明方面に抜ける臨海地下鉄を作って、直通運転する計画が浮上しています。つくばから東京駅、銀座を経て臨海副都心までつながる新ルートです。将来的には、東京湾上の中央防波堤を経て羽田空港まで延伸しようという大構想まであります。
実現すれば、こちらは東京湾を見晴らす高架橋を突っ走る、もっと爽快な鉄道路線になるかもしれません。残念ながら、筆者が生きているうちに開業するのは難しそうですが。
（旅行総合研究所タビリス代表）
