空前の「和食」「日本食」ブームが到来している。日本の食文化産業は日本ブランドの主軸として期待されている。しかし、海外の教育需要から眺めると異なる日本の国際競争力が見えてくる。それは、留学生に最も人気の高い教育需要は「フランス菓子」という象徴的な現象から読み取れる。
2017年、辻調理師専門学校と辻製菓専門学校の留学生の入学者数が同数となった。調理師を目指す留学生の6~7割が「日本料理」を学びに来たと答える。続いてフランス料理、イタリア料理、カフェと続く。製菓技術者を目指す留学生の方は、なんと半数以上がフランス菓子を学びに来ている。全国的に見ても、製菓系専門学校の留学生数は調理系専門学校の2倍以上といわれている。そのほとんどがアジアからの留学生である。
現在、アジアの国々は、日本から西洋文化を学ぼうとしている。しかも、直接ヨーロッパへ留学するのではなく、日本語を習得して日本から西洋文化を吸収しているのだ。
政府は、インバウンドやアウトバウンドという視点から戦略・戦術を練っているが、私たちはゲートウェイ戦略を提案している。文化の移動は、人と物の交流の後に動く。アジア・ゲートウェイ構想から10年以上たった現在において、文化戦略を見つめ直してみるべきだろう。
今アジアでは、西洋文化の普及を目的とするかのように、食や観光などの大学がタイやマレーシア、そしてフィリピンなどに設立されている。その大学へは欧米の教育機関が教育コンテンツを提供し、食材企業や旅行関連企業が協力・支援しており、広くアジアの国々からの入学者の獲得を目指すという。
10年前には、日本は物流の拠点となる「ハブ港」設立の戦略では後れをとった。文化拠点となる「ハブ教育機関」設立で同じ轍を踏むことは許されない。
(学校法人辻料理学館 辻調理師専門学校 企画部長、尾藤環)