旅館業法の改正は、2018年6月に施行され、早いもので3年を経過した。この時の改正は、旅館・ホテルの業種の統合と、いわゆる民泊新法(住宅宿泊事業法)の同時施行に影響された玄関帳場のIT化に対応する法整備であったことは、本紙面でも紹介されていたところである。
旅館・ホテルの建物・設備を預かる身となると、法律に関し、いささか厄介なことに気付かされる。その一つが「既存不適格」。建築当時では適法であったがその後の法冷改正によって適法ではない部分がある建物のことを「既存不適格建物」と言う。例えば、エレベータの耐震設備や防火シャッターの危害防止装置など、お客さまの安全・安心につながる設備でありながら、大規模な改修工事を実施しない限り、是正しなくても違法建築物とはならない建物のことである(建築基準法第3条第2項 法律の施行又は適用の際現に存する建築物には適用しない)。
改修工事には多額の工事費を要することもあり、事故につながりかねない状態が放置され、この場合、改修時期を逸した建物になってしまうことも多い。
そしてもう一つが「時間差」だ。法律が改正されると施行規則・施行細則・条例等は、時期が遅れて変更になることが多く、旅館組合等でアナウンスがある地域では情報が入りやすくて良いのだが、そうでないエリアで建物の管理を任されている方は、自ら情報をキャッチしなければならず大変であろう。
私が赴任していた仙台市では、今年の4月に公衆浴場法の施行に関する条例(公浴条例)等が一部改訂され1日から施行されている。旅館業法の施行に関する条例も同様に(1)浴槽水の消毒方法の追加、(2)水質基準の見直し、(3)文言の修正がされた。
公浴条例ではさらに、男女の混浴年齢制限「10歳以上」が「7歳以上」に見直され、滞在中の温泉旅館では、寝耳に水の状態で館内案内、ポップ、ホームページ、予約スクリプトの変更等を慌てて実施していた。この施行日は今年の10月であることを書面上見て取れるのだがどうしたものか。
最近、本社に戻ってきた時「この前のウェピナーでインフエンサーが言ってた内容を加味して、社WEBのバナー修正しといて」と、聞こえた。いったい何のことやら。もしかすると私もすでに「既存不適格者」なのか? コロナ禍で若者たちが主催するオンラインセミナーにもいくつか参加させていただき、たくさんの刺激を受けた。1人の人間として、いくつになっても勉強し、成長し続けていく。ただのシニアではないと奮起した次第である。
世代を生きるのではなく、今の時代を生きよう!と思う。
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 NPOシニアマイスターネットワーク理事 小山純)