振り返ると2020年2月27日、当時の安倍晋三首相が全国一斉休校を要請された。ここから、新型コロナとの戦いが始まった。私たち観光業、特に宿泊業は、県境をまたがないなど人の流れを抑制する施策が出ると、たちまち大きく落ち込んでしまう。自助努力だけでは、どうしようもない無力感にさいなまれることもあった。しかし、金融機関の融資の支援や国、県、市のさまざまな補助金や支援で、雇用を守り、何とかつないで今がある。
回復に向かう希望の光は、ワクチン接種にかかっている。菅義偉首相のリーダーシップのもと、ワクチン接種も予想以上に進み、少し供給が間に合わないところもあるものの、現在全国民の約40%が接種していて、高齢者の重症化が激減してきている。まさしくワクチン効果と言うしかない。また、10月から11月ごろまでには、全国民のワクチン接種希望者への接種がほぼ完了する方向で全力にて動いていただいている。
回復の兆しがすぐそこに見えてきているように思える。自社では今、チャンスと捉え、ワクチン接種が進み、Go Toトラベル事業が再開され、従来からのお客さまが戻ってこられたとき、以前よりも進化したホテルとして、ホテルの一番大切な機能の一つである快適な睡眠をお約束するために新しいベッドと新しい羽毛布団でお休みいただけるように、全客室のベッドと羽毛布団の入れ替えを行うことにしている。
一方、ワクチン接種が進み重症者が減少してきた暁には、ぜひ、コロナの状況の判断基準を、「新規感染者数」から「重症者数」に変更し政府の見解として発信していただきたい。
そうすることで、マスコミの方々のテレビでの報道やワイドショーなどで報じる論点なども変わってくるのではないかと思う。そして、視聴されている多くの方々も心穏やかに、明るい希望の感じられる日常を取り戻せるのではないかと思う。
そして、多くの方々に今までできなかった旅行や食事に思う存分行っていただき、楽しんでいただける空気感の醸成をお願いしたい。
(委員・淵村文一郎=鹿児島県鹿児島市・ホテルユニオン)
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【委員会より】
近い未来を展望し、その実現に向けて行動すること。簡単なことではありませんが、経営においては、非常に重要な視点だと思います。特におもてなしを創造することは、宿泊業の中核にあります。
また、世の中の「空気」を感じ取ることも重要だと思います。お客さまと接することの多い宿泊業では、従業員全員がいろいろな感覚を研ぎ澄ますことが求められます。
「空気」を作り出すことは、なかなか難しいことですが、業界が率先して声を上げることはできるのではないでしょうか。