私は、平成18年に福島県の南会津にある実家の旅館(藤龍館)に入社し15年ほどの旅籠人としての人生を歩んでいる。入社当初、リーマンショックから継続する不景気のあおりを受け経営状態は債務超過の状態にあり、11年前には東日本大震災を福島県民として経験した。父が学生時代に亡くなったこともあり、私の旅館経営におけるイロハは組合組織である「全旅連青年部」と地銀を中心とする地域関係事業者に教えていただいた。
その経験は、青年部長となった現在、コロナ禍という未曽有の世界的危機の渦中において、震災当時からの経験は非常に役立っている。経営を安定継続するための金融機関支援の取り付け方や補助制度の活用など個々の力を最大限発揮する必要があることはもちろんだが、組織としての活動が事業継続において非常に重要であり、宿泊産業にはその組織がしっかりと根付いていること。
現在はそのような経験の中で青年部長として、旅館・ホテルは「地方創生の核」を担い観光を日本の基幹産業へ押し上げる存在であると考える。現在、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合において県内の52軒の宿泊施設において調査した「関係する県内取り扱い業者」の数は1557事業者であり約30倍となっており、旅館・ホテルが活性化すれば地域が活性化する構図であることは間違いがない。
現状よりさらに魅力ある産業となるためには労働生産性向上が急務であり、このコロナ禍の副産物として特に労働生産性の向上につながるものとして、非接触業務関連ツールの充実があげられる。それに伴い、労務管理、情報管理、予約管理、会計管理において、さまざまなツールやサイトへ予約会計システム(PMS)を自動連動させる必要があり、それが可能となった際には大きく労働生産性が向上すると考え、今後関連事業者に働き掛けを強めていきたい。
また、コロナ禍での人流が抑制される期間はわれわれ宿泊事業者がその価値を高めるための絶好の準備期間であると考える。本年度は観光庁による「既存観光拠点の再生・高付加価値化事業支援」制度があり、観光・宿泊施設や地域の高付加価値化を図る改修などが行える。しっかりと活用を促し、そのような制度を常設化および補助率や補助額を向上していただけるよう提言をしていきたい。
上記のような内容を踏まえ現状のこの厳しい状況においては、(1)事業継続をするための支援の活用と拡充(2)感染拡大防止に配慮した上での旅行宿泊需要の喚起(3)旅館・ホテルが地域を巻き込んだ面としての魅力向上、の3点を推進継続することが足腰の強い宿、そして産業を作れることだと信じ、まい進していきたい。
(委員・星永重=福島県会津湯野上温泉・藤龍館)