東京で開かれていた第32回夏季オリンピック大会が8月8日夜、閉幕した。新型コロナウイルスの影響で1年延期され、ほとんどの会場で無観客となった異例の大会だった。期間中も感染拡大がやまず、この日、新たに1万4472人のウイルス感染が確認され、感染拡大に歯止めがかからない状態が続いている。感染拡大にはオリンピックの影響も少なからずあるが、国民のコロナ疲れと慣れによるところが大きい。
われわれ、宿泊業界も国や都道府県で定めるガイドラインを忠実に実行し、県民応援割を活用しながら、苦しい現実を何とか生きながらえている。しかし度重なる緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の発令によりますます出口が遠のいていく。全国知事会は夏休み期間の県境をまたぐ移動の中止・延期を提言した。昨年に続き全国の夏祭りが次々に中止となったことで繁忙期の落ち込みは計り知れない。
政府の金融支援策も宿泊業全体に届いてはおらず、この状況を打開するためには業界団体が再度結束して、国に対しさまざまな制度の継続や追加措置を求めていくことが必要だ。われわれもコロナウイルスに対して正しい知識を持ち最大限の感染防止策を講じ、安心安全な宿泊を提供することでコロナウイルス終息後のインバウンドや他県からの教育旅行などに対応していきたい。
今年は「奄美・沖縄」「北海道・東北」の2件がユネスコ世界遺産に認定された。手つかずの自然と固有種が豊富な奄美・沖縄。縄文という共通文化で発展した北国の遺跡群。コロナ禍で観光形態が変わりキャンプやトレッキングなどのアウトドア人気が高まる中、観光客の増加を期待したい。
また未知の自然や文化に触れるだけでなく、全国各地で地域住民との交流を兼ねた小規模イベントも開催されている。
海外への渡航が難しい現在、われわれ宿泊業界も日本各地の魅力を、切り口を変え、こまめに情報提供し、自らも果敢に挑戦することが必要だ。コロナ禍であっても宿屋の原点を忘れず来るべき時まで英気を養いたい。
(委員・佐藤康=岩手県繋温泉・ホテル大観)
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【委員会より】
4回目の緊急事態宣言、オリ・パラの無観客開催、ワクチン接種の進行の一方で、増加する感染者。落ち着かない2021年夏ですが、飲食業や宿泊業を取り巻く環境は、ますます厳しさを増しています。製造業やIT関連ビジネスが急速に回復している中、私たち宿泊業の業況は取り残されてしまった感があります。
観光立国として、国の成長戦略を担う基盤である宿泊業を守らなければなりません。今こそ、業界一丸となって、この危機に立ち向かう時が来ています。