神社とともに歩んだ歴史
第702回よその旅館ホテル
──創業は。
「江戸時代前期、寛永5(1628)年です。現社長は10代目になります。筑波山神社の前身の寺院が改築したのが寛永9年で、先祖が『参拝者が増える』と考えて創業したと考えられます」
──神社とともに歩んできた旅館ですね。
「そうです。年初は初詣のお客さまが多くなります。今では年中通して筑波山登山のお客さまに最も利用していただいています。紅葉もきれいです」
──宿の自慢は何ですか。
「創作和食が自慢の料理です。食材は地元産を使うよう心がけています。豚肉は県推奨の『ローズポーク』、牛肉は県産の常陸牛よりさっぱりしている『紫峰(しほう)牛』を使います。紫峰牛は生産量が少なく、一般に出回ることがほとんどないため、うちでは畜産農家と直接取引で入手しています。野菜も県内産を利用します」
──筑波は「ガマの油」の地元ですね。
「江戸時代の傷薬です。火傷やすり傷、切り傷に効くといわれています。現在は薬事法の問題もあり、正式な薬ではなく製法も変わりましたが、館内でも販売しており、お土産として人気です」
──油売りは口上が有名ですね。
「地元では伝統を守るため『ガマ口上保存会』を組織し、技術を伝承しています。うちも90歳になる大女将が技術を受け継ぎ、お座敷で披露しています。口上を楽しみに訪れるお客さまも多く、大女将が1日に数回、口上を披露することもあります」
──吉岡さんは口上をされますか。
「地元の伝統文化なので、いつかは祖母から受け継ぐ必要があると思っています」
【1泊2食付き平日1万4700円から】