室生寺の四季を望む宿
第784回よその旅館ホテル
──宿の売りは。
「室生寺の門前という立地です。『橋本屋』という屋号は、門前の川にかかる太鼓橋のたもとにあることからきています。客室から境内が見渡せるので、春の桜や秋の紅葉など、四季の移り変わりを楽しんでいただけます。昨年からは紅葉の時期に室生寺のライトアップが行われており、闇夜に浮かび上がる鮮やかな紅葉と国宝の五重塔を見ていただけるようになりました。今年も11月15日から半月ほど実施予定です」
──宿の歴史は。
「江戸時代の伊勢街道沿いの小さな旅籠がルーツなのですが、現在の橋本屋としては明治4年の創業で、私で5代目になります。戦後、料理旅館となり山菜など土地のものを使った精進料理を楽しんでいただいています。メーンは大和芋を使った料理です。すりおろしだけでなく、おろしたものの天ぷらなども提供していますが一番の名物はとろろ汁です。大和芋の粘りと食感を生かし、出汁をきかせた温かい汁もので、おすすめです」
──客層は。
「8割が関東方面からです。常連のお客さまが多く、紅葉や春のシャクナゲの季節などは、皆さん翌年の予約をして帰られます。また当館は写真家の土門拳さんの定宿でしたので、土門さんが撮られた室生寺の写真にあこがれてお越しになる方も多いんですよ」
──課題は。
「室生寺自体のお客さまが減っていることです。地元の店や市が協力してライトアップなどを行っていますが、アクセスの悪さもあり苦戦しています。室生寺自体の素晴らしさは揺るぎないものなので、PRや周辺の空き店舗の活用による魅力度アップなどに力を入れたいですね」
【7室、1泊2食1万6200円】